ショパンの雨だれ
春爛漫の気候の時期に毎日寒くて雨ばかり降っていました。鳩舎を改築中ですので、大工さんも寒い中の仕事でやりにくかったと思います。
それでもお願いしたとおりに次第に完成に近づきますと、今までより管理しやすそうな景観に近づいてきますので何となくウキウキしてくるものです。
毎日、同じような日々を過ごしていても何かしら変化や新たなることに接していき、今までより高い精神を持ちたいものです。
ピアノ曲「雨だれ」は憂鬱な気持ちの中にも少しでも明るさを求めて変化していく精神を内包してるように感じます。曲は終始「ラが半音下がった音」を鳴らし、絶え間ない雨だれの雰囲気を醸し出しています。しかし、その音は優しく響いたり、他の音と共鳴し合ったり、クレッシェンドしてついには嵐の如く激しく鳴ったり、そして再び静まり返ったりして同じ音であっても表情にいろいろの変化を見せます。
楽譜のようにこの曲の中間部は、まるで夜中に密林の中を何頭もの象が行進してるかのような不気味な雰囲気で、しかも、その重い足取りはのっそのっそと次第にこちらに近づいて来るような恐ろしい世界です。暗闇に迷い込んでしまった自分が恐怖から脱出できなくて、もう怖くてそこから逃げられない世界に身を置いてしまってます。
引きつづき象は行進してますが、次第に遠ざかってやれやれどこかに行き、足音は聞こえなくなります。
ああよかったと胸を撫で下ろし、明るい日の光も差し込んできて今まではどうしてたんだろうと思うような優しく愛に満ちたメロディーがやってきてほっとします。しかしながら、それでも「ラが半音下がった音」はずっと鳴り続けます。
この音楽は同じ音を単純にしかも同じリズムで鳴らすという憂鬱感を「統一」とし、一方、クレッシェンドなどにより音の大きさ、また、メロディーが優美な響きを持って希望に「変化」させ、聴き手の心を不安から安堵へと導いてくれるようです。
日々の生活で私たちは、憂鬱な天気の日や物事がうまく行かない日があるものです。それでもショパンの「雨だれ前奏曲」のように、ひとしずくの期待をもって明日につなげたいものです。
自然界の音は昔から「ラ」に近いと考えられていたようです。ショパンはそれになお現実味を入れ、半音下げ響きをより陰鬱にしたところがこの曲の聴きどころと思います。
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