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2007年8月 8日 (水)

ユーモアか偶然か~ベートーヴェンの第九

  第九交響曲に謳われた人類愛は混迷続く今の世にも通じるあまりにも壮大なテーマでしょう。ベートーヴェンが詩人シラーの詩に出会ってから曲が完成するまで、実に30年もの年月を費やたといわれます。20代から晩年まで、この詩の偉大さと崇高さに陶酔し作曲を続けたことになります。

 ご存知のように第4楽章に独唱者4人と合唱による声楽が加わります。私は一度、合唱の一員としてバスパートを歌ったことがあります。

 私がかつて担当した生徒さんは高校生の時から30年間、群馬交響楽団の第九演奏会に出演しつづけています。誠に素晴らしく思います。あるいはこのくらい歌い込んでベートーベンやシラーの心境に近づけるのかもしれません。

 【原詩】Freude, schonel Gotterfunken, Tochter aus Elysium,

Wir betreten feuertrunken, Himmlische dein Heiligtum !

Deine Zauber binden wiedel, was die Mode streng geteil,

Alle Menschen werden brudel, wo dein sanfter Flugel weilt.

 【訳】喜びよ、美しい神々の火花よ、天井の楽園の乙女よ、我らは炎のように酔いしれて、崇高なあなたの声域に入るのだ。あなたの魔法は時流が厳しく切り離したものを再び結び合わせる。あなたの柔らかな翼のとどまる所で、すべての人々は兄弟になる。

 旋律は比較的簡単に口ずさめる歓喜の歌です。30年費やして考えついたこの旋律は単純な音符の連続で作曲されてます。偉大な作曲家であるからこそ「単純の中に美を発見してる」と言えるかもしれません。

 ベートーヴェンはこの歌を【ドレミファソ】の五音のみで作曲してるのです。残りの【シ】と【ラ】を使ってません。それであっても、人々に2つの音が抜けてることを全く感じさせないところに超人たる所以があるでしょう。

 実は私は以前からベートーヴェンはユーモアのある人だったのではないかと思えてならないのです。というのは、「彼はこの旋律に【ドレミファソ】のみを使っていて、【シ】と【ラ】は一見ないけれど、「作詞者がシラーなので」その意味で【シ】と【ラ】はちゃんと入れてるよ」と言ってるように思えてならないのです。

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