静かにシンフォニーを聴く
歩いて10分ほどの音楽喫茶クラート【蔵人】へ行きました。お客さんがいなかったので一人淋しく紅茶を飲みながら、マスターにCDをお願いしました。ベートーベンの第7シンフォニーです。オーボエで始るAーEーCisーFisの冒頭は、この曲がまさに羽を広げようとしてる優雅な力を内包してるようです。
最近、第7を聴く人が多いと聞きます。クラシック音楽ファンでなくとも、溢れ出るリズムと活力ある響きが多くの人を惹きつけるのでしょう。
「ある指揮者の提言」の著者ワインガルトナー(オーストリア1863~1942)は第7について次のように述べています。「ゆっくりしたテンポは存在しない。ある亡き将軍の葬送の列が遠く通り過ぎて行くかと思われる程ゆっくり演奏したら、人々はいったい何と言うだろう」とこの曲が示すPoco sostenutoのテンポの解釈について若い指揮者に提言しています。
私がお気に入りである第二楽章は、対比する悲しいメロディーがそれぞれ個性を十分に保ちながら対旋律と絡み合い次第に融合、そして充実さを増していきます。
ワインガルトナーは彼の師匠に当たるグラーツの言葉を引用し「第二楽章冒頭のa-mollの和音は魔法の鏡を覗き込むことを示し、やがて、ある人物の姿がおぼろげに浮かび上がり、その人は幻想的な世界を見つめているかのような目で我々の前を通り過ぎて消えてしまう。」と著書の中で思い出してます。
世の中には美しいメロディーが限りなくあっても、ベートーベンが生み出したこの楽章の比類なき美しさは、彼の対位法的手腕が最高に発揮されてるのではないでしょうか。作曲の年齢は回復不可能な耳の病が進行している42歳。芸術は厄年に左右されないのであろうか。
ひと月に1度は蔵人で音楽を聴きたい。できれば一人でなく行ってみたい。
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コメント
こんにちは、はじめまして。
倉賀野の「蔵人」の近所に住んでいます。ずっと気になってはいたのですが、なかなか入る勇気がありませんでした。ベートーベンの第7はいいですよね、私はクライバー指揮のCDしか聴いたことがありませんが。今度、蔵人へクラシックを聴きに行こうと思います。いつかお会いできるといいな。これからもよろしくお願いします。
投稿: マイ | 2007年9月28日 (金) 10時03分
マイさんへ
アクセス有難うございます。蔵人の斜向かいに今は使われてない高信がありますね。元々そこは私の家でした。ですから蔵人の近辺は子供の頃によく遊んだ場所です。私は蔵人へはあまり行ってません。でも、倉賀野では珍しい雰囲気です。一度はいいのではないでしょうか。やみつきになるかも。
私は時々自宅でピアノコンサートを開いています。無料です。郵便局の裏で鳩を飼ってる家です。カッキーより
投稿: カッキー | 2007年9月28日 (金) 10時42分
お返事ありがとうございます。郵便局の裏に住んでいらっしゃるのですね。私の自宅から歩いて15分もかからないと思います。ピアノのコンサートとは素敵ですね! 次の機会に是非うかがってみたいです。楽しみにしております。
投稿: マイ | 2007年9月28日 (金) 16時41分