レース鳩の交配1週間前に行なうこと
日照時間も大分伸びて、もうすぐ立春。多くのレース鳩愛好家にとっては楽しみな交配の季節を迎えます。今年はどんな個性を持った鳩が生まれるか期待するものです。レース鳩の交配でも新たな鳩との出会いにつながり、生命の誕生は誠に神秘なものです。当舎では15ペアーを交配予定しており、今春、誕生する雛はおよそ80羽です。
レースと言っても、鳩レースは競馬とは全く異なります。まず、飼い主は自分の鳩舎内でレース鳩を誕生させなくてはなりません。それには、他鳩舎から導入した種鳩♂に自分の考えた♀を交配したり、♀を導入したり、以前から在舎してる種鳩同士を交配し、新たな生命を誕生させます。それを育て上げ、訓練を通して方向判定の教育を施した後にレースに参加させ遠方から自鳩舎まで帰還させます。つまり、鳩レースは我が子のように雛を育て上げることから始まります。これを作出といいます。
レース鳩の交配には恋愛結婚はありません。先祖の血統を考えて、飼い主の意志で強制的にカップルにさせられます。でも心配いりません。けっこう幸せそうです。
鳩レースでは、他鳩舎の鳩と大空で競争しても、それは人間が空想するのみで、現実に競争してる姿は見られません。ですから、競馬のようにレースを見て楽しむことはないのです。
あくまで、【距離÷時間=速さ】をパソコンで計算し、分速により序列が決まる数学的な楽しみなのです。
北海道など考えられないくらい遠方から群馬の自鳩舎をめざし、山越え、谷越え、津軽海峡を越え、特に近年では猛禽類の追撃を交わし、道南からでも連続約10時間も飛翔を続けなくてはなりません。道北からの1000Kレースともなれば夕刻、福島県あたりで安全な場所を探し、ビバークして翌朝再び自鳩舎めざし飛立つのです。
鳩の速さが人間の陸上競技と異なる点は短距離(100~300K)でも、中距離(400~600K)でも、長距離(700~1000K)でも分速に差がなく、分速はそのときの天候や飛行ルートなど諸事情により変わっても、飛翔距離によって変わることはなく、どの距離でも平均して1000~1300mほどです。これは鳩レースで不思議なことです。
北海道から群馬へ帰還するためには、天性と言えるほどの「粘り強い帰巣意志」、「的確な方向判定能力」、「猛禽からの危険回避力」、そして何よりも「強靭な肉体」を生まれながらにして持ってる必要があります。
これには日本やヨーロッパに於いて自身が優れた成績を持つ鳩、あるいは、卓越した成績に裏づけられた先祖を持つ種鳩こそ、子孫に優秀な雛が誕生する確率が高く、全国のレースマンは今年こそと、交配に力を注ぐことになります。ですから交配はレースの始まりです。
このようにレース鳩は先祖から受継いだ血統の開花を期待し、各鳩舎は2月頃より交配に入ります。1回の産卵で2個の卵を産みます。交配して産卵までが1週間から10日、そして抱卵が18日ですから、雛の誕生まで約1ヶ月かかります。立春に交配すると3月初めに卵が孵ります。
ところで、現実には「個性ある鳩」や「優秀な鳩」は突然変異の如く類稀なことです。飼い主にとって、優秀な鳩の誕生は1シーズンに1~2羽でしょう。生涯の思い出となる素晴らしい飛翔を示す鳩はごく僅かで、10羽いれば高い確率でしょう。
ところで、私は交配予定の1週間前より準備を始めます。それは先ず、巣房と巣皿の徹底清掃です。暫らく閉じておいた巣房は埃がたまり、不衛生この上もありません。薬品による消毒が必要なので、私は近くの薬屋で購入した消毒薬で除菌します。安くても効果があります。巣皿は天日干しします。
なお、鳩自身の健康については交配1ヶ月以前に薬品投与して、万全の体制で交配に臨みたいものです。鉱物飼料のレッドストーンは整腸作用にいいです。丸い赤い糞は健康の証と見ます。
そして、交配1週間前に、先ず、巣房の数だけ予定の種オスを種鳩鳩舎に入れ、巣房の前にある止り木を自由に確保させます。ただし、巣房の中には入れません。この状態で1週間過ごさせます。これにより自分の巣房の位置が確実になります。
交配日は比較的暖かな日の午前中を選び、初めに予定のメスを巣房の中に入れます。こうすると、オスは中に入ろうと狂ったようになりますが、飼い主はメスの態度を観察し、時期を見計らって白い前扉を開けオスが入れるようにします。
後はメスが巣房の位置を覚えれば交配の完了となります。すでにオスが覚えてるので、メスも簡単に巣房の位置を覚えます。
当舎では立春過ぎに交配予定のため、本日、オスに巣房の位置を持たせました。明日から、交配するオス・メスを決めなくてはなりません。あと1週間、毎日、血統書をにらみつつ、【見た目が対称的あることを重点にし】決定したいと思います。
また、前もって用意することは各巣房の床をスノコにすることです。これにより足が冷たくならず雛が健康に育ちます。
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