現代のレース鳩血統に求められるもの
先日は福島県二本松から群馬・高崎市の当舎まで直線距離190kを2時間37分で帰還しました。当舎上空に差し掛かり、思わず力が抜け、翼をすぼめての急降下です。いかにもホッとし安堵の到着態勢に入りました。
私たち人間はこんな距離を自力では決して帰れるものではありません。レース鳩は字は読めない、口は利けない、頼るのは脳に内蔵されてる神秘的な方向感覚のみ。そして、人間の作った鳩舎へ帰って来ます。しかも、レース鳩にとってこの距離は公式レースでは最も短いのです。今後、2週間ごとに100Kずつ距離が伸び、5月上旬の900~1000Kレースへと飽くなき挑戦は続きます。
一見、【空を飛ぶ鳥のように自由に生きる】の歌のように感じやすいですが、現実はとんでもありません。空を飛ぶ鳥に自由は決してないのです。それはレースの途中、幾多の猛禽類の追撃をかわし、命さながら逃げるように帰還してくるからです。
このため、近年の鳩レースでは危険回避能力が先天的に備わってる鳩でなければならないでしょう。性格的におっとりしてては餌食になってしまいます。天敵ハヤブサや鷹から自らの生命を守る咄嗟の判断力と翼の力が求められます。羽色はどちらかと言うと白系統や栗系統より、ドス灰的なもの、カラスに似たようなものが有利な気がします。
しかし、羽色については雪の多い地区では却って背景の山々が白いので、猛禽からは白系統の鳩の方が見難いので有利とも言われてます。
また、鳩舎内で日々、選手鳩の行動を観察してますと、中には非常にすばしっこい鳩がいます。捕まるのを嫌がる鳩です。このような鳩はおそらく自然界においても機敏で、猛禽類からのアタックから逃れる術を持ってると考えられます。人間にすぐに捕まる鳩は空中においても簡単に捕まるでしょう。
鳩の大きさについても、大き過ぎるとどうしても行動が鈍くなる確率が高いので、これらの点も考慮し作出に生かしたいものです。
今までは帰巣本能に優れ、スピードあるレース鳩が血統的に求められましたが、近年はこのように、危険回避能力が備わってることが求められます。
従来通り、優秀な血統にプラスして、表情一つにしても厳しい顔つき、厳しい目つき、そして飛翔力抜群の鳩こそ頼もしさがあります。作出はそれも目標にする必要があるでしょう。おっとりしてるより恐い顔をしてる鳩に頼り甲斐を感じます。
立春を過ぎると、日本にある推定2万の各鳩舎は種鳩を交配して新たな生命の誕生に将来の活躍を期待します。
立春の昨日、当舎でも16ペアーを交配しました。Fragrant Mountain鳩舎より導入した「スチール号」「ジャンヌ・オルレアン号直仔」ペアーから誕生した鳩が種になってるので、今春はそれらとの交配が可能になりました。
今回、「スチール号」の交配相手は、鳩友「ピジョンクレージー鳩舎」のカイパー系×クレージーボーイ系LBCで自身400K3位、900K2位の翔歴を持つ長距離♀と組み合わせました。カイパーという点から一種の戻し配合です。これで2腹引き、その後は交配を変えます。
その他、アルカディア鳩舎からのノレイユ系ペアーも期待してます。Fragrant Mountain鳩舎作「ジャンヌ・オレルアン直仔」は埼玉・名前のない鳩鳩舎作アマノシルバー系と交配し楽しみです。Fragrant Mountain鳩舎作「スーパーイヤリング号直仔」は「スチール号」「ジャンヌ・オルレアン号直仔」ペアーから誕生した最も出来のよい鳩と交配しました。
著名な「たぶん弟鳩舎」作稚内GN3回記録鳩の直仔で、はと鳩舎作翔「Hope GN号」900K経験鳩は浅間山鳩舎のヤンセン・マタイスRWともう一度交配しました。理由は交配が合ってると見え昨年、素晴らしい鳩が誕生したからです。オルハン・ミラー系はロード・バックス系と、ファンローンはワンダーセレクト5重近親RCとそれぞれ交配しました。また、茨城・高塚系は東日本GN当日総合優勝ミラクルクイーン号系を中心に戻し配合します。
3月上旬にはこれらの交配による雛の誕生は私にとって楽しみです。栄養価の高い小粒の餌とカルシュームを豊富に与えるようにします。
【注:Fragrant Mountain鳩舎は岐阜県・香山鳩舎です。】
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コメント
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鳩の帰巣本能など・・・神秘の一言に尽きますが~・・・
甲斐甲斐しく御世話なさるカッキーさんの姿にもリスペクトですッ!
私には、単なるペット感覚でブログ拝見してましたが、とんでもない御苦労?オアリなんですねェ~・・・
3月上旬の朗報を、楽しみにお待ちしてま~す♪
投稿: 花舞 | 2009年2月 6日 (金) 00時35分
花舞さんへ
このブログはレース鳩に関心ある方が多く見ておられることが分かっています。しかし、あくまで、それ以外のあらゆる方々が閲覧されてると思われますので、レース鳩とは何か。鳩レースとはどんなレースか、についても書きたいのです。
つまり、レース鳩に素人の方にも、また、すでにレース鳩を長い間、飼育され立派な成績を上げてる方にもお読みいただいてると想像しますので、初歩的なことと同時に、私の体験や考えてる技術で、なるべく高いレベルに挑戦のつもりで書いています。
それにしても猛禽類が多くて特に山あいに鳩舎を構えておられる方々は育てた子供が毎日さらわれるようで、誠に辛い現代なのです。昔は猛禽類がそれほど出現しませんでしたが、近年ずいぶん増えてます。何かの理由によって、生態系がバランスを欠いてきたのでしょう。
それでも私の県外の鳩友の皆さんは、めげずにレース鳩の飼育に頑張っておられます。
時々、オフ会と称し、お会いしてお酒を酌み交わしています。
投稿: カッキー | 2009年2月 6日 (金) 19時47分