中央中等管弦楽部に音楽家の風貌あり
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4月18日高崎市の群馬音楽センターで開催された中央中等教育学校管弦楽部の第7回定期演奏を拝聴し、生徒さんの演奏に年々磨きがかかってきていると感じた観客は私だけではないでしょう。一人一人の生徒さんが演奏に集中する姿は、すでに音楽家の風貌を備えています。
フラッシュをたけない写真撮影の必要から、私は前列より3列目に席をとりましたが、却ってそれが功を奏し、生徒さんの演奏に伴う機敏な動き、音楽に対する真摯な精神を身近に捉えられ一石二鳥でした。
一般論としてオーケストラ鑑賞では真ん中か後方の席がよいと考えられがちですが、それはレコード鑑賞で言えることと思ってます。オーケストラを大きな室内楽と考えれば、比較的身近な席で聴くことは躍動的な指揮者の表情はもちろん、楽器演奏者の息遣いや瞬間瞬間の気迫の入った精神を身近に感じ、音楽の時間的動きが生きたものとして捉えられるでしょう。オーケストラの場合、小さい音で表現するパッセージでは後方より前方の席が断然いいと思います。前の席といっても大きな会場では実際には、かなり離れてます。
ステージ演奏で、より良い音程、より良い音色、より良いアンサンブルを求めて総勢81名が同時に挑むには精神に一刻の猶予も許されません。私は真剣な眼差しでシンフォニーに挑む中央中等オーケストラの生徒さんを拝見拝聴し、群馬県一幸福な中高校生と感じました。挑む音楽が真似ごとでなく本格的だからです。
しかも、中学生の年代からオーケストラの体験ができる学校は群馬県では中央中等を除いて他にありません。中高一貫教育を通じて二度とない貴重な青春時代を、このように稀に見る崇高な環境で過ごすことは、今後の人生をより高い精神に導く理想郷です。
プログラムを見てその作製にも驚きました。それは時間的制約がある中、練習を第一に考えていることが伝わってきます。一般的に多くの学校ではプログラムに広告を掲載し、印刷屋で製本し、入場料で会場費を賄うようです。生徒さんにとって入場券の販売は練習のしわ寄せになるでしょう。
練習から本番への過程は最も集中すべき教育の場であり、会場費は学校で負担すべきでしょう。中央中等は入場無料でも、手づくりのパンフレット内容は充実してます。
それにしても81名のステージ演奏者にプラス新1年生を合わせると100名からの部員では日々練習場確保に苦労があり、いろいろ工夫されたことでしょう。人は高い目標があれば互いに協力し合って創意工夫できるものなのですね。
ところで、肝心の演奏についての感想です。特に力を入れて挑戦されたと思われるドボルザークの「新世界交響曲」について述べます。
有名なシンフォニーであることから、観客は良く存じており、それがいっそう難曲になるかもしれませんね。しかし、多くの難しいパーセージを見事にやり遂げました。作曲年代は日本の明治中頃で、ボヘミア人ドボルザークがアメリカで目にしたのは、広大な大陸の自然や悲痛な黒人霊歌、現地の人たちが奏でる民族的音楽や踊り、そして葬式など悲しい風習でしょう。このシンフォニーを覆う暗さ悲しさはボヘミアへの望郷の念とともに、ここに由来してるとも考えられます。
1楽章は低音弦楽器群の人たちで始まるゆっくりとした暗い序奏。それを引き継ぎ対照的なホルンの叫び、フルートやオーボエはアメリカ滞在を期待するかのごとく煌びやかな音色で表現され、これを聴いただけで私はもう本格的なシンフォニーの世界に浸っていました。突如として雷鳴轟くティンパニーが大自然に対する畏敬の念を効果的に表現されてました。
2楽章は何と言ってもオーボエダモーレに酔いしれました。この楽器独特のこもった音色は誠に素晴らしかったです。静かな場面で大勢の観客の前での独奏は緊張するものです。しかし、伸び伸びした音色が哀愁味を内包し、会場によく響き渡りました。一体この旋律を何回練習したのでしょう。数え切れないでしょう。この音色ならレスピーギの「アッピア街道の松」にあるソロもきっと上手に演奏できると思いました。いつか、拝聴したいものです。
3楽章は管楽器と弦楽器、打楽器で掛け合うリズミカルな楽曲で、技術の見せどころであっても、その中に故郷ボヘミアへの望郷とアメリカインディアンの民族性との融合を連想させる速いテンポに乗った細かなリズムがこの楽章の聞かせどころ。どこか心に通じる五音音階は私たち日本人にも愛着を感じさせます。しかし、この楽章もトランペットやホルン、トロンボーンなど金管群の力強い響き渡りにより、壮大な大陸に心が戻りました。
終楽章は総じてダイナミックです。その中にあっても時々聞こえるクラリネットの響きは味わい深い哀愁味が醸し出され、すごくアカデミックな音色でした。オーケストラで練習してると吹奏楽とは異なる崇高な音色に変化するようです。
今回も感じたことですが、中央中等オーケストラの皆さん、誠に本格的な音楽の部活です。3人の素晴らしい顧問教師によるご指導のもと、ますますシンフォニックな音色、そして重厚なハーモニーに磨きをかけてください。9月23日を楽しみにしています。
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