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2011年9月12日 (月)

悲劇的序曲からシンフォニー「春」へ挑む中央中等教育学校管弦楽部

 建物は高崎市が誇る音楽の殿堂・「群馬音楽センター」で、かつて私もここでアルジェリア組曲の「フランス軍隊行進曲」を指揮したことがある思い出のホールです。

 演奏が行われた9月11日は東日本大震災から半年経過した日、しかも、ニューヨークの摩天楼を襲ったテロから10年目となる日です。天災とテロの違いはあるものの、3.11から半年、9.11から10年目と重なるのは無論偶然に過ぎない。

 この日を選んだかの如く中央中等オーケストラ第10回定期演奏会がここ群馬音楽センターで開かれました。 私は比較的前の席に座りました。それは演奏する生徒さんの真剣な表情や難曲に挑む精神が目に見えて伝わるからです。

 クラシック音楽は目先の楽しさにとどまらず、それを超越する旋律及び音色の美しさ、そして溶け合うハーモニーや、生き生きするテンポにリズム、とりわけ充実する精神の深さを追求する芸術なので、生徒さんの難曲に取り組む姿と、気高い精神を感じ取りたい気持ちがあります。

 大震災からの復旧、苦難から復興へ、そして春へと、プログラムが組み立ってることが分かります。

 演奏前に、犠牲となられた方々に対し、会場全体で黙祷をしたのは驚きであるとともに、中央中等教育学校の人間愛を主眼とする教育方針の深遠さに胸が熱くなりました。

 まず、外国人の先生指揮による「悲劇的序曲」で幕を開け、私の心は3.11や9.11に結びついてしまいました。1stバイオリンに導かれた二短調の響きは、これでもかと悲壮感が漂い、平素耳にするブラームスとどこか異なるのは、この曲に満ち溢れる憂鬱感の所以なのでしょう。

 続いてサンサーンスのアルジェリア組曲は、初めに地中海の大海原を感じさせます。ティンパニーに続くビオラの主題は会場によく響き渡り、それはリレーの如く次々とパートにバトンタッチしていきました。

 続いて弦のピチカートにとても異国情緒が感じられ、それはイスラム的な雰囲気を彷彿させるもの。加えてムーア人の風習までも予感させるフルートの音色は光り輝き、かなりの実力と察しました。弦による強烈な北アフリカ的リズムもこの曲の雰囲気を見事に醸し出しています。

 夕べの幻想では、ビオラの主旋律がどことなく異国的に響き、タンバリンのリズムに乗ったフルートはまたしても音色が魅力的、曲は緊迫感を増すアッチェルランド。土着の民族舞曲風に激しく終わりました。

http://www.youtube.com/embed/oYeIvGPJF7Y 

 私にとっても、フランス軍隊行進曲は懐かしい名曲。世界に誇るフランス・レププリケーヌ交響吹奏楽団にとってお得意のこのマーチは、オーケストラで聴いてもワクワクするものですね。欲を言えば中間部におけるトロンボーンの迫力がもっと出たら、この曲のダイナミックな楽しさが一味違ったかもしれない印象を持ちました。

 トランペット吹きの休日では、3人の音色と音量のバランスが良く、特に印象に残ったのはチェロを中心とする低音域のオブリガートが3本のトランペットの華麗さとは対称的な対旋律を奏で、滑らかに、しかも唸るようでとても惹かれました。音楽とはこのように主旋律と対旋律が絡み合うとワクワクしますね。校長先生による指揮とは、この演奏会を学校全体で成功させようとする証が伝わりました。

 シンコペーテッドについては、音色に魅力あるパーカッションが指揮に合わせると言うより、「自らテンポを先導する感じ」になれば、聴衆は、よりワクワクしたものになると感じましたが、全体的に楽しいの一言に尽きました。

 ところで、「春」と名のつく名曲はベートーベンのバイオリンソナタ「春」や、ヴィヴルディーの四季より「春」、瀧廉太郎の合唱組曲・四季から「春」などですが、この日のメインはシューマンのシンフォ二―第1番「春」です。春を題材とする音楽の中でも、とりわけ大曲に取り組まれ敬意を表します。

 この曲を通してコントラバスの響きは常に重厚なものとなり、それに乗ってバイオリンの高い演奏能力が一際目立ちました。同時にクラリネット、フルート、オーボエのハーモニーはよく溶け合い、音色が洗練されて優雅に聴こえました。

 一方、ホルンの二重奏はずいぶん練習した証でしょう。誠に調和し表情豊かに聴こえました。時々素敵な音色が響くバズーンは高音域も低音域も正しい音程が会場に伝わりました。

 夏休み返上で、とりわけ厳しい節電と猛暑の中での練習に耐え、この日を迎えられたことに頭が下がります。本当に頑張りました。

 素晴らしい顧問のご指導のもと、県内では稀に見る本格的な音楽演奏を求め、これからも充実した学生生活を送ってください。

 

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コメント

私たち中央中等の第10回定期演奏会にお越しいただき、ありがとうございました♪

定期演奏会の翌日にはもう新しい楽譜のコピーが始まり、どのパートも一生懸命練習に取り組んでいます。

次回もより多くの方に聞いていただけるよう、みんなで心を一つに頑張っていきたいと思います( ^ω^)☆


本当にありがとうございました!!

投稿: S.M.D | 2011年9月17日 (土) 09時33分

S.M.Dさんへ
 ブログに到達していただき、コメントも有難うございます。
前回(春)は演奏日を知らずに過ごしてしまいました。
素晴らしい演奏会なので、その点、社会へのPRを一層工夫されるといいと思います。
 今回の演奏も一フレーズごとに丁寧に聴かせていただきました。私は中央中等オーケストラのアカデミックな挑戦にいつも心を打たれます。
 プログラムの中にあるmaestosoのスペルの訂正をお願いします。2ヶ所かもしれません。
 次回はどんな音楽表現をされるか今から楽しみにしております。
 

投稿: カッキー | 2011年9月17日 (土) 10時08分

私たちの第10回定期演奏会、楽しんでいただけたでしょうか?

実は演奏後、カッキーさんらしき方と目が合いました(*´v`*)゜.+:。

カッキーさんのような方に演奏を聴いていただける幸せを再認識しました。いつも本当にありがとうございます。

次回の演奏会は4月1日です。
以前もこの定期演奏会で演奏したことのある名曲をプログラムに加えてあります(`・∞・´)

ご都合がつきましたら是非いらしてください★

投稿: music | 2011年9月17日 (土) 10時48分

musicさんへ
 拙いブログへのアクセスに感謝いたします。
仰せの通り、目が合った方がおり、もしかして以前にブログを読まれ、私を知っててくださるのかなと思いました。
私は前の方に座り、身体も大きいので少し目立つかもしれません。
 この感想は当日の夜、一寝入りして午前2時ころから明け方にかけて書きました。感銘が生々しい内のほうが皆さんに伝わると思ったからです。
素晴らしい作品にチャレンジできる環境にいる生徒さんはあまりいません。真似ごとでなく、本格的なクラシック演奏に取り組めることは誠に幸せです。
 生まれ変わったら、中央中等オーケストラに入りたいです。   生まれ変われるかな?

 

投稿: カッキー | 2011年9月17日 (土) 14時51分

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