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2012年9月 2日 (日)

驚き!中央中等管弦楽部の「未完成交響曲」

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 群馬県立中央中等教育学校・管弦楽部による第12回定期演奏会を拝聴し、県内の中・高校生の中でも高い芸術的な品格を備え、無限の可能性に挑戦できる環境にある生徒さんたちに涙しました。

 もし、生まれ変われることができるなら、中央中等オーケストラに入部したいと心底思いました。それは多感な青春時代に大作曲家の優れた作品に直接触れることのできる稀に見るチャンスがあるからです。

 彼らの未来は、生涯にわたり音楽芸術を愛好する豊かな生き方へと結びつくことでしょう。一般的には、中高校生時代にそのような環境に恵まれることはないものです。

 私が中央中等オーケストラに対して深く感銘するのは、取り組みについて「音楽が真似ごとでなく、本物である」点です。

 日頃、古今の名作に挑戦できる中・高校生の姿を見ることはほとんどありません。多くは、娯楽的要素に偏るものや、コンクールと称して他校に勝利することが目的になり、芸術本来の持つ無限の美への挑戦とはなり得ないものです。

 ところで、今回のプログラムも多岐にわたり、4月から短期のうちに、また、猛暑の夏休み返上しての集中練習には、指導者の先生とともに、それに応えて頑張った生徒さんに敬服いたします。

 特に難曲である「道化師」ではギャロップやエピローグを中心として、マリンバのハイレベルな実力、トランペットによる明瞭なテンポ感に会場が躍動感に包まれました。

 スメタナの「モルダウ」では弦楽器も、管楽器も、なかんずくバイオリン群の厚みある音色で奏でた短調の極みから一転して、長調での雄大にして華やかな表情への変化は超高校級に感じてなりませんでした。

 その間、流れるフルートやクラリネットにおける細かなパッセージの流麗さ、そして優れたテクニックが会場に伝わり、「音楽とは一瞬一瞬における美の連続である」ことを改めて認識できました。

 今回の定演ではたくさんのプログラムから、The sound of musicやSing Sing Singも楽しく聴けました。すべてについて感想をメモリましたが、代表してメイン曲「未完成交響曲」について拙い感想です。

 この曲が「なぜ未完成になったか」について司会者の方が少し述べられましたが、シューベルトがオーストリア音楽協会の名誉会員に推薦された返礼として書き始めたとも伝えられ、曲の途中までの楽譜を協会に送ったものの、生涯僅かに31才という短命のため、シューベルトの死後も楽譜が未完成のまま長期間、協会の書庫に眠り、死後、約40年ほどして発見され、日の目を見たと伝えられ、司会者の説明のように1・2楽章が余りにも良く出来てしまったので、流石のシューベルトも次の楽想へ発展しなかったのかもしれません。

 また、1楽章・2楽章ともに3拍子で作曲したために、本来、シンフォニーは3楽章が3拍子の形をとるので、この点からも次へ続かなかったとも推測できます。

 いずれにしても、この曲は「形式は未完成であっても、内容は十分に完成している」といえることから、今日、名曲中の名曲として残ってるのでしょう。

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 ところで、1楽章の導入はコントラバス・チェロによる地底から響くような表現にまず圧倒されました。会場が静まり返った低音の出だしは、音程に神経を集中しなくてはなりません。40年振りに暗い書庫から日の目を見た神秘性は充分に会場に伝わりました。そしてバイオリン群の16分音符に先導されたオーボエ・クラリネットによる第1テーマは、特に繰り返した2回目が素晴らしかったです。

 それに続くホルン・ファゴットによるロングト―ン後のゆったりとした四重奏は、リタルダンドを伴って有名なハーモニーが見事に奏され、それに続く第二テーマはチェロにより伸び伸びとした幸福感漂う名旋律に繋がりました。

 1楽章における演奏の圧巻は、導入のテーマを用いた掛け合いの展開部にありました。これでもかと盛り上がる対位法的音楽の流れが、次第に頂点へと進むところに指揮者の先生の指揮振りが、より気高く表現され、そのタクトという筆に見事に応えている生徒さんのキャンパスは、トロンボーンの溌剌とした響きに代表され、私は背中がぞくぞくしました。美とは次第に精神が高揚する充実さにあるのでしょう。この楽章の頂点は対位法を伴う展開部にあり、演奏にとても感銘しました。

 2楽章はホルンとファゴットの魅力的な音色に誘導され、バイオリンによる束の間の天上の幸せから一瞬、不安感がよぎり、全体的に急緩による不安と安堵そして納得が交互に感じられ、明暗の対比が強弱をも伴って明確に表現されてました。

 それに続くクラリネットの悲壮感に対し、幾分か明るい兆しを呈示するオーボエの応答に安堵です。ここで聴き逃してはならないのが、この旋律を惹きたてるバイオリン、ビオラによるシンコペーションのリズムで豊かな音色に参りました。

 再度、今度は先にオーボエによる悲壮感漂う呈示があり、それに応答し、あたかも隙間から一筋の光が差し込むようなクラリネットの優しさに、これ以上の充実を求めない私がありました。

 今回、未完成交響曲を拝聴し、私たちは何事も満点を求め取り組みますが、その目標に挑戦することは大切であっても未完成交響曲のように「内容の充実さ」も人生において肝心であり、「いかに豊かな内容を持つか」が真の幸福につながるのではないかと悟りました。

 中央中等オーケストラ部の皆さん、オーケストラの織り成すハーモニーに心から堪能できました。国際色豊かで、人間味いっぱいの顧問の下、これからも本当の美を求めてください。お陰さまで楽しい時間が持てました。 

 

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音楽教育」カテゴリの記事

コメント

昨日は定期演奏会にお越しいただきありがとうございます。部員を代表して心から感謝申し上げます。
自分は未完成の後に指揮者に花束を渡したものでございます。
貴重な音楽的チャンスを大いに活用して部活動をしていきたいと思います。

ちなみに3月31日の定期演奏会のメインは1812年とボロディン交響曲第2番です。またのご来場をお待ちしております。

投稿: m | 2012年9月 2日 (日) 07時58分

mさんへ
今回の貴オーケストラ定演についてのブログは印象が薄れないうちと思って、夜中の2時に起き、2日の朝に書き上がりました。書き上がるとともにmさんからのコメントが入りました。
その後も推敲を重ねてます。
未完成後の花束贈呈を目の前で拝見しましたが、それがまさかmさんとは思いもよらず、いつかしっかりお顔を拝見して文章を書きたいです。
以前にお会いしたジェフリー・バドリック先生は私の顔を知っていて下さり、チェロで校歌を弾くときステージから私に会釈してくれましたので、私も手を振って応えました。
ところで以前に貴校に私の姪が音楽教員として勤務してました。また、今は亡き妻はmさんの先輩です。

投稿: カッキー | 2012年9月 2日 (日) 19時49分

そうなんですか!

自分も時間の都合さえ合うのであればぜひお話したいものであります。

自分のメールアドレスを添付しますので、お互いの予定を確認して実際にお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?

部活見学はいつでも大歓迎です。

投稿: m | 2012年9月 2日 (日) 21時13分

mさんへ
 メールいたしました。3月31日の「1812年」楽しみです。頑張ってください。

投稿: カッキー | 2012年9月 3日 (月) 02時49分

高校時代に先生の音楽の授業を受けました。はるか二十年前のことですが、憶えていらっしゃいますでしょうか?
授業を脱線して語ってくれた鳩の話で、ピンときました。
私はその後音大に進学し、高校教員に。2回目の転勤で今年度から中央中等に赴任になりました。
この業界も狭いもので、縁を感じます。先生のためにも、中央中等管弦楽部員の生徒たちの成長に、微力ながら尽くしていきたいと存じます。
定期演奏会にご来場いただき、温かいコメントをありがとうございました。

投稿: D | 2012年9月 3日 (月) 21時46分

 久しぶりにステージでお姿を拝見しましたが、お父様譲りの音楽に感じました。
先生が音楽部会に入られたとき、私は県全体のまとめ役をしてましたが、お忙しそうでお見えになりませんでした。
先日は七日市に伺いました。

投稿: カッキー | 2012年9月 3日 (月) 22時01分

次女ってあのブライダルプランナーしてると言ってた娘さんが結婚なさるんですかぁ~?

ついこのあいだ、働き始めたって感じします。

歳を取ると月日が経つのが早く感じてしまいますねっ。

サックスの演奏、がんばってください。

投稿: taka | 2012年9月 5日 (水) 21時45分

takaさんへ
 しばらくですね。娘は9月17日に結婚することになりました。仰せの通り、時間の経過は速いものです。これからは「いかに年を取らない生き方ができるか」をめざします。
人前でソプラノサックスを吹くのは暫くぶりです。披露宴では、吹くまでお酒があまり飲めないです。後で十分いただきます。

投稿: カッキー | 2012年9月 6日 (木) 02時07分

カッキーさんはじめまして。部員の一父兄です。ブログでは中央中等管弦楽部に温かいお言葉をいただき、深く感謝申し上げます。
本日、娘さんが華燭の典を挙げられたのですね。誠におめでとうございます。
ところで私は約40年前、富岡市内の中学校で吹奏楽部に入っておりました。その時、当時顧問だったM先生(今は教育関係の要職に就いていらっしゃいます)の伝で、一度ご指導いただいたお方ではありませんか?プロフィールを見てハッといたしました。
もし違っていたら大変申し訳ないのですが…

投稿: 管弦楽部@一父兄 | 2012年9月17日 (月) 22時48分

中央中等オーケストラ保護者様へ
仰せの通り、40年ほど前に確か一の宮付近の社会教育施設で、守田先生ご指導の学校の演奏を聴かていただき、私は指揮をしたことがあるように思います。不思議なご縁ですね。
子供さんが理想のオーケストラに所属され、今度は1812年とのことなので、このような名曲に挑戦されてるお子さんは群馬県では殆どなく、最も優れている部活動と思います。
これからも、コメントをお願い申し上げます。

投稿: カッキー | 2012年9月18日 (火) 00時48分

やはりそうでしたか、その節は大変お世話様になりました。カッキーさんの苗字は私の周りに殆どないので、強く印象に残っていました。青春の1ページとして当時の事が懐かしく思い起こされるのと同時に、本当に不思議なえにしを感じます。
1812年、私には思い入れのある曲であり、実は定期演奏会のアンケートで、2回続けて今後の演奏希望曲として書いたのです。
私のリクエストが採用された訳ではないかも知れませんが、大砲の音や管・弦・打楽器群の咆哮を、中等オーケストラがどのように表現するのか、今から楽しみでなりません。
子供は毎日の練習が楽しくて仕方ないようですが、親もそれ以上に楽しんでいます。

投稿: 管弦楽部@一父兄 | 2012年9月18日 (火) 23時58分

中央中等オーケストラ保護者様へ
 コメント有難うございます。
中央中等のオーケストラ定演はもうすでに定着し、私は幾度も鑑賞いたしました。
毎回、演奏の取り組みや、表現が本格的で感心しています。
次回の、ボロディンもチャイコフスキーも期待しています。

投稿: カッキー | 2012年9月19日 (水) 06時26分

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