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2013年4月 1日 (月)

中央中等教育学校オーケストラの序曲1812年 ・・・・・降雪の場面に感銘・・・・・

P1030550【Click please!】

 3月31日は「耳にいい」の語呂合わせから「オーケストラの日」。また、平成24年度の最後の日であり、学生にとって翌日から学年が進級する日で、社会人にとっても転出入があり、人それぞれが歴史の節目の日でもあります。

 演奏会場である群馬音楽センター前には、今まさに満開の桜花が今年度・最後の、また、5年生にとっては最終の中央中等オーケストラ演奏会を祝福しているように見えます。

 半年前からコントラバス奏者である部長さんと、オーボエ奏者である副部長さんから次回はボロディンの2番、及びチャイコフスキーの「1812年」を予定との知らせに、ロシア音楽に興味を持つ私の心はワクワクし始めました。

 ボロディンと言えば「中央アジアの平原にて」や「ダッタン人の踊り」がすぐ思い浮かぶメロディーでロシア五人組の一人。チャスコフスキーは「悲愴」や「白鳥の湖」で日本人に親しみやすい作曲家です。中央中等オケがこのような大作曲家の作品に発信的に挑戦する姿に、この学校の心の豊かさ、及び、芸術を愛好する人間教育を感じざるをえません。

 教育方針として、年2回の定期演奏会を無料にしている点に他校は見習うべきでしょう。コンクールで成績を上げるとチケットの値段を上げる学校もあり、どうしたことでしょう。教育とはかけ離れてます。これでは生徒は本来の音楽美の追求より、切符の販売ノルマに力を入れなければならない本末転倒があります。群馬県立中央中等教育学校は誠に卓越した教育的配慮がなされていると思います。

P1030552 【高崎市が音楽の街であるシンボル電話ボックス】

 演奏はまず、オーケストラの楽員100名の多さに、そして、本格的シンフォニックな響きに心を打たれました。この人数は平素の個人練習やパート別練習、そして全体合奏の場所にかなりの工夫が必要で、これは嬉しい悲鳴と想われます。

P1030554  今回の演奏について感想をすべてメモしました。拙いブログですが、馴染みの深い1812年を記します。

 会場が静まり返ったところでのロシア正教会聖歌を序奏とし、これを奏でるビオラ・チェロの重奏は、特に音程に難しさがあったことでしょうが、悲壮感漂うロシア的響きに集中していることが充分感じられ、この曲の持つ全体像を予言してました。これから戦争が始まるロシア国民の不安を暗示してるかのごとくに聴こえ、暗雲に包まれ当時のロシア国民の悲痛な覚悟が会場に漂い、素晴らしい序奏でした。嵐の前の緊迫と予断を許さない暗雲を醸し出しました。

 チャイコフスキーは1840年に生を受け、この曲は1880年頃の作曲と言われ、「年代的に1812年より68年後」ということになります。これは丁度、わが国が先の大戦から現在まで経過した年月に相当します。

 チャイコフスキー自身は1812年の戦争について、もちろん身に覚えがなく、私たちが近代日本史を学び68年前を知ったことと同じです。

 ところで、この曲においてナポレオン率いる数十万人のフランス軍は、ロシアへの侵攻を表わすのに「ラ・マルセイエーズ」のテーマのみを用いてます。一方、ロシア軍を表わすのに数々のロシア民謡を取り入れ、平和を取り戻したく往時を懐かしむもの、そしてロシア国民の現実に迫った悲壮感を表現してます。

 演奏では、哀愁味を主導するパーカッションの民族舞曲的リズムは大変に魅力がありました。これに乗りフルートやオーボエの悲痛にして時々ユーモアある表現、また、勝利寸前では昔の帝政ロシア国歌がチューバ・トロンボーン・低音弦楽器群で強力に奏されるなど描写表現は遺憾なく聴き手に伝わりました。

 チャイコフスキーがロシア人であることから曲の中では圧倒的にロシアの優勢が支配しており、もしかして現代フランス人でも、この音楽には多少の抵抗があるかも知れません。

 曲は急緩を交互に次第に盛り上がり、管楽器群と弦楽器群による壮絶な掛け合い、それは戦況有利な面と、時折、聞こえる不利に陥る面が交互に現れ、一進一退の移り変わりが上手く表現されてました。私の友人バトリック先生指揮のもと、両軍の描写がありありと瞼に浮かびました。

 特に、トランペット・ホルンによる「ラ・マルセイエーズの断片的テーマ」は力強いものから、敗戦的気運の濃い戦況まで明確に伝わり、対比が素晴らしいです。今回の演奏で、特に目立ったものとしてパーカッション群の的確なテンポと歯切れよいリズム、そして、低音トロンボーンのよく響き渡る音色に感銘です。それは全体を包み込む音色を奏し感銘しました。なかんずく、1st violinに代表される優美にして哀しい表情には中高生を超越してる演奏表現を感じました。

Dscf0085 【群馬音楽センター隣のSymphony Road】

 この曲の圧巻は後半にあり、それは平素、体験しない酷寒の地において、しかも食糧不足での戦いを強いられフランス軍が敗退を余儀なくされるところです。

 チャイコフスキーは、数十万のフランス軍兵士を困窮に追い込む場面で、もの凄い降雪を連想させる「連続的八分音符による下降音階」をこれでもかと繰り返す手法を用い、逆に酷寒を味方にするロシア軍を表現し、ついに圧勝を表わす帝政ロシア国歌と、国民の喜びを表わすロシア正教会の聖歌、そして教会の鐘を鳴り響かせました。

 中央中等オーケストラの演奏は自然の猛威を、3拍子の中にあって2拍子的な「連続八分音符の下降」をより効果的に奏し、観客の私たちまでを酷寒のロシアの降雪の中に佇む気持ちにさせました。最後に、大砲の音を応援団の大太鼓を交えたところに工夫があり、ロシアが勝利した歴史的1812年の音楽は終わりました。

 今回の定演を最後に5年生は引退と聞いていますが、本当にお疲れ様でした。オーケストラ部で名曲に取り組んだ数々の体験は、皆さんのこれからの精神生活に誠に貴重です。今後も、安易に流れない充実した人生を追求する人物へ邁進していくものと確信しています。

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コメント

お忙しい中お越しいただいてありがとうございました。

今年一年、後輩の成長を間近でみることができました。入学直後の稚かった1年生もみるみる成長しています。中高一貫校だからこそ味わえることだと思います。

また来場者も演奏者も皆笑顔でとても楽しんでいるのを舞台の端から見て、今までに感じたことのない喜びを感じることができました。準備していたパンフレットが足らなくなったり、ブラボーがホール全体に鳴り渡ったのもそのあらわれだったのかな、とも思います。

私事で、カナダ研修に行った時のエピソードを1つ申し上げます。パーティーに行った時のことです。留学生が自分も含めて3人同じテーブルにいました。慣れない英語で会話をしてみると、なんと、平壌と大邱の人だったのです。楽しそうに食事をしており、食後は日朝韓の3人で散歩にも行きました。この平和な関係を国家間にまで広げてほしいと思いました。

自分はこの経験やオーケストラ活動を通じて、「誰かを幸せにする手伝いをしたい」と考えるようになりました。そのために、これから受験勉強をして参る次第です。

カッキーさんとお話ができてとても幸せでした。本当にありがとうございました。


投稿: m | 2013年4月 1日 (月) 17時42分

mさんへ
英語スピーチコンテストの副賞として、定演前の1週間をカナダに滞在していたのですから、3月31日の定演のことが管弦楽部の部長として心配だったでしょう。でも、部員はその間しっかり練習していたことが演奏から窺えました。
しかし、振り返れば、どちらも成功して素晴らしい日々が続き、ずっと心に焼きつくことでしょう。
日朝韓の3人での交流とは素晴らしい体験です。このような民間外交の末広がりを未来へ託したいものです。
秋には私も音楽センターの指揮台に立ちそうです。それではこれからの1年はしっかり受験勉強に専念され、初志貫徹をめざして下さい。

投稿: カッキー | 2013年4月 2日 (火) 04時19分

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