静寂の大峰沼にこだまする「モリアオガエル」
五月晴れに、群馬県北部に位置する大峰山一帯を歩きました。同行者は元職場の同僚Samuel Toddさん。彼の運転する車で前橋を7時に出発。コンビニで朝食と昼食用の冷やしラーメンなどを買い込み、車は一路、上越新幹線の上毛高原駅へ一般道で向かいました。
In seven hundred meters, make a right turn.と麗しい女性の声で誘導する英語版ナビ。渋滞とは進行方向逆でスムースなドライブ、渋川市から沼田市を通過です。
大峰山駐車場から登り始めると、切れ間ない何十万本という桧や杉林の中の一本道を歩きます。樹木は枝打ちした形跡が見られ、よく整備されてます。すべての樹木は垂直に高く伸び、素性の良さが感じられます。
予想よりも早く、標高1000mの「大峰沼」に到着するや、大自然の奥山にもかかわらずゲコゲコと鳴り響くカエルの声に驚嘆。ここは日本固有種「モリアオガエル」の生息地です。
一方、この大峰沼の特徴は大きな浮島があることです。群馬県指定天然記念物であり、沼の面積の5分の2を占め、その厚さは8mほどあるといわれ、わが国で見られる浮島の中では最も大きく、貴重な存在と言われます。
対岸の樹木は新緑に映える湖面に映ってます。自然が織り成す色彩美はその多様性を持ちながら、先史時代より人知れずこの深山で独自の美を表現してきたのでしょう。湖面に浮かぶ島と、響き渡る「モリアオガエル」の合唱に、大昔から人の手が加えられてない群馬の自然に驚嘆です。
往復6時間歩いても、道中から目的地の吾妻椰山(あずまやさん1323m)山頂まで他のハイカーに一人も出会わない奇跡。このような珍しいことは山岳のベテランSamuel Toddさんも経験しないとのこと。
道中、歩けることの幸せを再認識しつつ、最後の登りがきつい吾妻椰山山頂を目指します。ここは有名なノルンスキー場のそのまた上に位置します。歩幅を狭くして歩くと脈拍は速くなりません。これが疲労しない登攀法と彼から教わります。
山登りの目標は明確です。それは山頂を極めることに集中します。同時に、息を飲込む光景が眼前に広がる瞬間ではないでしょうか。
上越国境・魔の谷川岳連峰は戦後、上越線開通以来、1000名ものアルピニストの命を奪った山です。登山家にとっては、険しさと美しさ、そしてロッククライミングの魅力に満ち溢れる山岳なのでしょう。
暫し上越国境の残雪に目を奪われ、左の方向を見たら、何と亡き妻と登頂した「平標山」がはっきり望めるではありませんか。山頂で過ごした当時を思い出すとともに、群馬を愛してやまない彼女の顔が脳裏に浮かびました。
登山では、山頂での楽しみの一つにお弁当があります。Samuelさんが恒例の紅茶を作ってくれ、山のベテランは常に便利な湯沸かし器を持参し、しかも、それは自動点火の優れもの。どんな厳冬の環境でも点火できます。
砂糖と一滴のブランデー入り紅茶は身体の疲労回復が分かります。経験豊富な彼のお陰により、山登りの細かな気配りが随所に感じられ、厳しい自然を甘く見ない事前の準備と、余裕ある行程など危険を未然に防ぐ洞察力が彼の登山家としての核心と感じます。
偶然にも帰路に発見した真沢温泉「美人の湯」で疲れた身体をときほぐしました。湯の性質はぬるぬるし、「美人の湯」命名の由来は肌がすべすべすることに因るのでしょう。
今回の登山で感じたことは群馬県は誠に広いこと。殆どの山岳地域に人はいないこと。四季それぞれ特徴ある雄姿を見せる谷川連峰こそ群馬の誇り。大峰沼の「モリアオガエル」と天然記念物・浮島を鑑賞できたこと。
何より、足腰を鍛え、今後も中低山の山歩きを続け、新たな群馬の発見、人間とは何か、そして人生とは挑戦あってこそ、いろいろのことに出合い、若さにつながるのではないかと悟ります。
Samuel Toddさん、また、いい山へ連れてって下さい。それまで、筋トレして体力を作ります。
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