野崎由美ソプラノリサイタルを聴いて
昔7年間、音楽教員として県立榛名高校に勤務してたことから、この日、私は懐かしい里見街道を通りながら、一路、「野崎由美ソプラノリサイタル」が開催される榛名文化会館をめざしました。
この地は当時、榛名第二中学校があったところで、今でも自然に恵まれた広い庭は、当時の校庭の名残です。誠によく整備され緑いっぱいの庭に感銘です。
この付近は近年まで榛名町として独立してましたが、町長選挙により合併派が当選し、高崎市に合併となりました。財政面から合併に賛成しても、「榛名町という町名がなくなる」とは知らずに投票した人が多かったのではないでしょうか。
生まれ故郷・榛名町の町名がなくなり、寂しさを募らす町民は今でもきっと多いことでしょう。現在、榛名という名が残ってる公式名は榛名山、榛名富士、榛名湖、榛名高校、榛名中学、新幹線の安中榛名、そして榛名文化会館などあっても、いつかは慣れ親しんだ榛名町という町名を復活したい思いの人は多いでしょう。
隣の倉渕町や赤城山麓の富士見町など合併後も町名を残してる例はあります。
ところで、ソプラノ野崎由美さんの演奏にはこれまで「魔笛」を含め数回拝聴しました。もっと多く演奏会に行くべきと思ってます。しかし、すでに10年以上、一人暮らしの身てあることから、夕食時に開かれる夜の演奏会については、食事時刻がいつもと狂ってしまい健康に差し支えると考えてます。夜の演奏会が終了し、帰宅すれば9時過ぎです。
その点から、今回の演奏会は開演が2時であり、ご連絡も頂き、ぜひ拝聴したい気持ちになりました。開演時間の設定に感謝です。
プログラムは彼女が取り組んでると想われる日本歌曲であり、とりわけ木下牧子作品集からで、ご覧の曲を一気に歌い上げた体力と気力に、以前と変わらぬ若さ(美しさは言うに及ばず)にホッとし、生涯を通じて培った発声法を基盤に楽曲に取り組む崇高な精神が会場に漂いました。
私は「浜辺の歌」を常に車内で聴いており、日本の名歌を歌うソプラノ歌手としてレパートリーの一曲なのでしょう。
彼女の声を聴きつつ声楽の根本は、肺を取り巻く数多くの「呼吸筋の弾力性」ではないかと感じます。腹式呼吸といっても、現実に空気は肺のみに入ります。私はウォーキングするとき、強いゴムのように呼吸筋の伸び縮みを意識し、肘を曲げ、呼吸に合わせ前後に振り歩きます。
有名な話で、正しい呼吸法を生涯求め続けたフランスが誇るクラシック・サキソフォーンのパイオニアMarcel Mule は近年100才という長命で世を去りました。実は著名演奏家で長命は意外と少ないです。いつまでも生命を維持し、年齢を重ねても演奏活動できるには外からは見えない「呼吸筋の鍛練」こそ基本の基ではないでしょうか。
この点からも野崎由美さんの発声法は時に声量が充分豊かに感じられ、時に驚愕の迫力がホールいっぱいに響きわたり、歌ごころは観客の胸にドスンと入り、時に、この上なく優しいソットポーチェで通る声質を兼ね備え、柔軟に使い分けられる多くの引き出しが感じられます。
二部は、日頃、彼女が指導・指揮されてる「玉村町混声合唱団Coroぴあちぇーれ」が賛助出演です。東日本大震災チャリティーコンサートの幹事合唱団として被災地にエールを送っておられ、趣味を超越した活動に頭が下がります。いろいろの所で発表の機会が多い合唱団でしよう。皆さん生き生きして声が前に出ていました。
ここでも私にとって「びっくりポン」がありました。数少ない男声パートの中に私の高校時代のクラスメートで元・玉村町長のN君がいるではありませんか。野崎由美さんの日頃の芸術活動に対し、玉村町から文化功労章が与えられたとき、彼が町長であったことでのつながりかもしれません。
ところで、私も拝聴するNHK・FM「弾き語りフォーユー」でお馴染みの小原孝氏によるピアノ伴奏は彼女の声質と表現法に極めて相性がよいのでしょう。演奏合間に話された彼の説明「昨今は、音楽で人々が元気になり、音楽が必要である時代」になったとの話は、人間にとって苦難に直面したときこそ音楽が私たちの心に深く入るもの。復興を目指す被災者の背中を大きく押す力になるということでしょう。
どんなジャンルでもこなす彼のオールマイティーナな実力に脱帽です。NHK朝ドラ「あさが来た」のテーマ演奏には会場が大きく湧きました。
一方、いつもながら野崎由美さんの音楽会は観客との交流に重点が置かれ、「花が咲く」など会場と一体になる姿は、音楽会が単に聴かせものに終わらないと考える彼女の柔軟にして温かい人間性の表れではないしょうか。私も暫くぶりに声を出しましたが、野崎さんに聴こえたでしょうか。
今回、野崎由美さんの歌声を拝聴しつつ、学校における音楽教育でもっとも大切な基本は、よく通る声、響きある正しい発声法を「一般の生徒」に音楽の時間を通じて先生方による鍛練をお願いしたい気持ちを強くしました。
彼女の声の余韻が残る中、家路に向かいました。
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