高崎商業高校吹奏楽部第53回定演演奏会・・・・・驚愕の暗譜力
創部以来58年経過し、初代の波戸場先生から顧問は8代目となり、酒井会長率いるOBOG会員は800名になり、高商吹奏楽部は良き伝統の上に、脈々と新たな歴史を刻んでることを現役の生徒さんたちの演奏を通じて確認できました。
この度、文化の日に相応しく、第53回高商吹奏楽部定期演奏会が群馬音楽センターで開かれました。最初の頃、定期演奏会は昼の部と夜の部が同日に二回行われてました。
私は昭和時代に第15回~第25回まで11年間この定演を指揮する立場にあったことから、高商吹奏楽部には愛着と懐かしさがあり、今回、学校で行われた直前の練習会を一回見学し、そして、生徒さんたちの本番での溌剌とした演奏に期待と胸を膨らませ、ワクワクして音楽センターへ向かいました。驚くことに観客は超満員。私はやっと席に着くことができました。
本年より赴任された安斉先生がどんな指揮をされるか、指揮法に最も関心のある私は、先生の指揮ぶりを拝見し、一見して本格的に指揮法を勉強された先生であることが分かりました。それは的確な叩きであり、音楽への追求が十分に表現され、演奏する生徒さんにとって見やい指揮法と感じます。
私の考えでは、教師は平素の音楽指導力が根幹であっても、一たび、指揮台に上がれば、それは「本格的な指揮者でなければならなぬ」ということです。
プログラム1部は、コンクール課題曲、プッチーニのオペラの一部、そして先輩たちが演奏に加わったアルヴァーマ序曲などでしたが、プログラム構成に関して長い伝統とは異質な感があります。それは本格的なクラシカルの名曲が少ないことです。後ほど、スラブ行進曲とペールギュント組曲が聞えましたが断片的でした。
最も肝心なことは、流行のみを追わず、二度とない多感な青春時代に「普遍的な音楽美に触れることこそ、芸術教育の極み」です。ですから、一部に大作曲家の作品を1~2曲組み入れることで生徒さんにとって定期演奏会がより充実し、心底から音楽美を追求し終えた実感につながると考えます。
古典音楽の中にはオーケストラに限らず、吹奏楽でも十分効果的に演奏できる優れた楽曲はいくらでもあります。つまり管楽器が活躍する楽曲を選択することです。定期演奏会では一部、二部、三部の違いを明確にすると、よりメリハリが付くと考えます。
一方、楽器の音色をより芸術的に高めるポイントは大きく二つあると思います。一つは「静かな場所で一人で自らの音色をよく聴き、遠くにまで魅力的に響く音」です。常に他の人と一緒の演奏のみはなりません。二つは「自分より上手な人やプロの音色を聴いて真似る」ことに尽きると思います。
ところで、二部は流石に若者による楽しさの極みです。部員にとってこの楽しさは生涯忘れることはないでしょう。これだけ変化に富んだ動きや衣装、何より迫力。そして会場との一体感、しかも、二部、三部はすべて暗譜という徹底した記憶力に脱帽です。
練習場所確保の困難さ、限られた練習時間内での暗譜に心より敬服です。この努力と向上心、そして達成感は必ず将来への展望へつながり、社会へ出ても自らに自信が持て、力強く生きられるでしょう。演奏を聴いて、音楽とは人間の悲しみを表現できるもの、何より、これ以上ない楽しさをも表現できることを改めて学びます。
10年連続、群馬県代表として西関東へ出場という高商の部活の中でも、現在、ひときわ輝いてるパーフォーマンスは自信に満ち溢れています。それは全員が一ヶ所を見続けると思われる一糸乱れぬ統一感、見えない後方や、縦横に進むさまは考えられないほど難しい幾何学的交差です。
それに加え、楽器を持つ角度の統一性、なかんずく迫力ある音楽を伴い、ある意味で人間にとって極めて難しいことはマーチングではないかと、改めて高商ブラスの力量を感じます。人間とは自信を持つと凄い力が出るもので、観客の心はステージにくぎ付けとなり驚愕の連続です。
充実した定期演奏会を持って今回引退する三年生は多分、思い残すことはないでしょう。自らやれることの限界以上に努力しました。事前の準備の労苦は客には分かりません。自らひたすら努力し、客には最も良い部分のみを見せる姿勢は、今後、精神のあり方にいかに役立つか計り知れません。
一方、年間行事では、社会の高齢化に目を向け、福祉施設への訪問演奏などは特筆すべき行事です。音楽が困ってる人、日々、寂しく暮らしてる人の心に勇気と感動を与えることができるなら、これに勝る素晴らしい文化活動はありません。
三年生の皆さん、皆さんの演奏で私は一度は指揮してみたかったです。充実した3年間の部活動を心の財産とし、生涯にわたって芸術を愛好する高商の卒業生になってください。
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