本来、美しい音色を奏でるソプラノサックス
サクソフォーンはベルギーのアドルフサックスによって1840年代に作製されたことから、他の管楽器のようにオーケストラでの定位置がなく、平素、私たちが見習いたいサクソフォーン本来の美しい音色に接するチャンスは意外と少ないものです。
このような現実にあっても、サクソフォーンの音色はヒンデミットが述べてるように「理想的な音である」と私も感じ、若き日、彼のサクソフォーンソナタを練習したものです。1楽章はまるで声楽で演奏してるかの如く、伸びがあり、サクソフォーン独特の快いヴィプラートが余りなく発揮される作品です。
高校時代にアルトサクソフォーンを始めた私の思い出の一つに、群馬大学オーケストラの定期演奏会でサクソフォーンが必要なとき、例えば、ハチャトーリアンの「剣の舞」や、ラヴェルの「ボレロ」のソロを故栗原教授指揮のもと、大学生に混ざって演奏したことがあり、私にとって、若き日の一つの大きな音楽的刺激になりました。その後、群馬大学に入学し、定期演奏会でビゼーの「アルルの女」の間奏曲やメヌエットの対旋律を独奏したことも青春の一つの思い出になってます。
この頃、日本クラシックサクソフォーンのパイオニア故阪口新先生についてレッスンを受けるチャンスに恵まれ、貴重な体験になりました。
師曰く、サクソフォーン演奏で大切なことは「24の調性すべてにおいて、スケールとアルページョがスムースにできること」「オクターヴキーを使った高音と、オクターヴキーを使わない低音とはどちらも音色が同一であること」「高音と低音のアンブッシャーは締める力が同じであるが、高音は空気のスピードが速いこと、低音のスピードは緩いこと」「何より音程の正確さは基本であること」そして「常に自分より上手な人と演奏する」を教わリ、今でも、その教えと先生の「生の音色」は脳裏に焼き付いてます。
その後、生涯に亘りサクソフォーンは身近にありましたが、40代になって私が求める音色に最も合致してるのはソプラノサックスであると思うようになり、今まで持っていたサックスを順次下に出し、今では写真のセルマーGPソプラノサックスが生涯の分身的な存在になってます。時折、パーティーなどで演奏するときは緊張感を持って事前に快いヴィプラートを伴う音色第一主義で練習します。透明感を持ち適切なヴィブラートこそソプラノサックスの真髄と思ってます。
こんなことから現代的な速い音楽より、ソルベイグの歌、婚礼の合唱、愛の喜び、シルクロードりテーマなど旋律のきれいな楽曲を選び、会場に行き渡る浸透性ある楽器本来の音色を追求し、声楽の如く、人に音色が聴き入られることを目的にしてます。半年前に前橋市で行われたアメリカ人同士の結婚式では「婚礼の合唱」を奏でました。このように声楽的な曲では奏者自身、音色や表情に没頭できるので暗譜が原則です。
前述の如く、この楽器の歴史は新しいことから、つまり、それは今までになかった表現力、機能的に優れた運指であり、本格的演奏家の音色は誠に魅力があります。それは他の木管楽器のように、いわゆる笛の音であったり小鳥の声に近いものでなく、どちらかというと、人の声やバイオリンに近い音です。阪口先生曰く「優れたバイオリン奏者の独奏をよく聴くことで音色が磨ける」との教えは今でも頭から離れません。
今後、私はチマローザの作品を柔らかい音色で演奏してみたいです。平素、吹奏楽で演奏してる人は。常に大勢の中での演奏のみでは自らの音色を磨くことは難しいことから、時々は一人で音色を磨く時間と空間が基本と思います。
追伸・・・「チマローザソプラノサックス演奏」と検索するときれいな音色が聴けます。
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