御巣鷹山でレース鳩を放し、520名の冥福を祈る
群馬県上野村に位置する御巣鷹山の尾根は32年前、日航機が墜落した所です。私は群馬県高崎市に住んでることから今まで3回登り、お線香を手向けました。4回目として登った今回はレース鳩を11羽連れて登り、昇魂之碑の前で520名の御霊のご冥福を祈り午前10時に放鳩しました。
この日は朝6時30分に家を出発し、レース鳩を積んだ車は高崎市~富岡市~下仁田町~南牧村~湯の沢トンネル~上野村~御巣鷹山へのコースを辿りました。
以前は地理的に近くても険しい山岳に阻まれ、往来ができない地元では、近年、この湯の沢トンネルが開通したことで、上野村と南牧村や下仁田町が時間的に近くなり、地元では先人たちからの悲願が達成し、物流往来が盛んになった大動脈です。
トンネル内は南牧方面が低く、上野村方面が一方的に高くなってる傾斜の連続であり、4分ほどで一気に上野村の高い地点へ到達し、以前のように鬼石~万場経由に比較すると夢のようです。群馬県内では谷川岳の下を通過する関越自動車道トンネルに次ぐ長さではないでしょうか。
いよいよ車は自然豊かな上野村を走り、これからが登りの本番です。上野村の住宅街から20Kmも奥地で、しかも高地に位置する御巣鷹の尾根をめざします。
この界隈は山また山の山岳道路で多くのトンネルがあります。中にはループ式で高い地点に登るトンネルがあり、トンネル内はカーブの連続です。トンネルを出るとまたトンネルです。途中、水力発電の上野ダムが目に入りました。
トンネルを出ると今度は曲がりくねった狭い道の連続であり、渓谷に沿って急峻な坂道を登り、車のエンジン音は一層高なり、上野村の住宅街から遠く離れた奥地・御巣鷹山の駐車場にやっと着きました。家を出で2時間です。
近年、道が整備され、私が最初に来たときより奥まで車で行けるようになり、小型のバスでも駐車できるようになりました。しかし、最後の急峻は自分の足で歩かなくてはなりません。
鳩を休ませてから標高差180mの山道を籠を持って登ります。鳩が入ってる籠の重さは15Kgほどあり、片手に持って登ります。半世紀以上レース鳩を飼育してても、こんなことは初めてです。急峻な山道は10歩歩いては一休みの連続で、空気の薄い標高1400m付近では、呼吸が苦しく、せせらぎだけの静寂な一本道を昇魂之碑をめざします。
せせらぎの水を鳩に与えましたが、飛翔してないので飲もうとしません。いつかは着くと自分に言い聞かせながらの一歩一歩です。やっとのことで歌手・坂本九さんが眠る近くまで辿り着きました。
近くに水道水が飲み水として備えてあり、ここで暫く休憩です。鳩たちも揺れる籠の中でどこまで行くのだろうという顔をしてます。そして、ついに到着した高天原のような標高1539mの昇魂之碑の広場です。
事故以来、32年間、週5日は登って来てるとの黒沢さんに偶然お会いし、先日の8月12日にもテレビで拝見したお方です。彼曰く「長いことここで整備をしてるが、鳩を持ってきた人はあなたが初めてです。」との言葉に重かった鳩運搬の疲れもどこかに消えました。
何と彼は私と同い年とのことで、親しみが湧き、暫くの間、レース鳩について私にいろいろ質問されました。鳩の脚には私の氏名と電話番号が嵌ってることや、雛から育てて訓練し、東北地方や北海道から飛ばすことに驚かれました。
いよいよ10時になり、一斉に放しました。鳩の羽音と飛び立つ勢いの凄さは、あっという間のことで黒沢さんもかなり驚かれた様子です。11羽は一度旋回しただけで東の空へ消えて行ききました。
鳩たちは直線距離50Kmある高崎市で鳩舎を構えるPersimmon Marsh Loftをめざし、自ら空中で方向判定しつつ古巣へ向かいます。険しい山岳地帯なので直線的に飛ばず、多少大回りして飛びやすい所を選びながら鳩舎をめざします。
その後、私は暫く御巣鷹山の空や青々した自然を眺めて寛ぎ、いよいよ下山です。帰路は下り坂なので空籠を持って一度も休憩せず、一気に下山です。途中、東京から20名ほどの若い女性グループとすれ違い、珍しそうに籠を見てるので「昇魂之碑」で鳩を飛ばしましたと伝えました。
ところで、鳩飼育はレースとして競争も楽しいことですが、以前に鳩を通じて行なった日中友好と同様、今回は日航機墜落で尊い命を無念にも落とされた520名の御魂のご冥福を祈ることができました。これも平和のシンボルであるレース鳩飼育の冥利です。
世の中、ミサイルの日本上空通過で物騒な時代です。子々孫々のため、今を生きる大人の知恵で事故や戦争を未然に回避しなくてはなりません。
【追伸・・・御巣鷹山から放したレース鳩はすべて帰還しました。】
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