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2017年11月 9日 (木)

八ッ場ダム完成を期し、工事の進捗状況を見守る

P1020229【ダム本体工事は着々と高さを増す】

 60年間、懸案事項であった群馬県北部のハッ場ダム建設工事は、途中、民主党政権下にあって工事が中断しつつも、再度、安倍政権になり、ダム湖を跨ぐ二つの大きな橋はすでに完成し、名称はダムに近い方からハッ場大橋と上流にかかる不動大橋です。どちらもダムの対岸を結ぶ住民の生活道路です。ダム本体は着々とその高さを増してます。
 
P1020001【対岸には川原湯温泉の王湯がある】
 
 前回、私はちょうど一年前に訪れ、紅葉に彩られた山間の深い谷間にあるダム工事を見学したとき、未だ基礎工事中でダムの姿を成しでいませんでした。しかし、今回、立冬の11月7日に訪れ驚きました。それは巨大なダムの下方が目で確認でき、日々、高くなりつつあり、工事が軌道に乗ってる姿が確認できました。いよいよ本体工事が本格的になって、完成は三年後に予定されてます。遠方から見た限りではダム本体の下部の厚みは80~100mほどと思われます。
 
 一般の人がダム工事を見学するには東側の高台に見晴らしの良い見学地が特設されており、誰でも自由にそこから深い谷底のダム工事が見学できます。しかし、高い地点まで歩道を歩いて昇る必要があります。
 
P1020239 【高台にある見学地点・・・ここは絶壁の上】
 
 ハッ場ダムは活火山である白根山方面から流れる吾妻川を堰き止め、広大なダム湖を作ります。完成すれば湖面からダム湖の底まで100m以上はあると推測できます。現在、湖底となる場所で工事用のトラックが移動し、小さく見えます。
 
P1020237【ダムの湖底になる地点】
 
 ハッ場ダム工事についての概略は見学地点に説明書があります。
 
P1020232
 
 堤の長さは290.8mですが、ダムが建設される場所はこの界隈でも両岸が狭くなってるところであり、ダム湖になる両岸は400~500mになると推測され、県内でも最も広い人造湖になりそうです。おそらく、ダム湖一帯は新たな観光地として生まれ変わるでしょう。
 
 それは現在でもすでに、ここを訪れる人々の多さで分かります。皆さん、完成を待ちわびてるようです。両岸に新しく出来てる道路やトンネル、道の駅を始め、レストランなどは賑わっており、広い駐車場は満車状態で駐車が難しいほど賑わってます。
 
 ダム湖が完成した暁は、内外からこの数倍の観光客が訪れ、それは両岸にあるりっぱなトンネルや道路の様子で理解でき、ダムに観光船が浮かべば、この地の経済効果は想像を超えるものになるでしょう。
 
P1020240【黄色い愛車はやっと駐車できました】
 
 ところで、ハッ場ダムの完成により、最も大きな効果が出るのは治水と考えられます。このダムの目的はいわゆるmultipurpose damであっても、その第一は洪水調節であり、戦後、間もなく襲来し、群馬県でも600名ほどの犠牲者が出たカスリーン台風により、ダム建設の機運は高まったとされます。
 
 この他、不特定利水、上水道、工業用水、発電です。中でも、神奈川県を除く一都5県の上水道としての役目は大きく、緊急時以外は平素このために貯水します。群馬県の巨大な水瓶が関東一円の人々の生活用水になります。
 
P1020249【西岸の高台に完成したJR吾妻線の川原湯温泉駅】
 
 私の趣味の一つは健康維持のウォーキングです。また、ドライブも好きなので、高崎から1時間30分のダム湖に来て、あるいは電車で来ると川原湯温泉駅下車で、そこからダム湖周囲が歩けます。
 
 この駅からダムの堤の上を通過し、巨大な橋も利用して歩けばダム湖周遊のほんの一部であっても、推定5㎞ほどのウォーキングになるでしょう。橋の上は歩道が完備してます。汗をかいた後は、近くに日帰り温泉が、私の知る限り二つあり、心底よりリラックスするにはこと欠きません。
 
P1020243【ハッ場大橋も不動大橋も両側に歩道あり・・・これは不動大橋】
 
 歩道から下を流れる吾妻川を見ると千尋の谷です。吾妻川は紅葉が見事ですが、この辺りは埋没します。しかし、下流は吾妻渓谷として以前の景観が残されており、こちらも遊歩道があり、今の季節、紅葉を楽しむことができます。
 
P1020235【湖底になる地域】
 
 総じて早い工事の完成が待たれるハッ場ダムですが、完成の暁に、この地の経済効果は計り知れなく、それは観光です。関越自動車道・渋川伊香保ICより1時間はすぐに現地に着き、巨大なダム湖を周遊しただけでも、浮世の習いから解放できるでしょう。2020東京オリンピックと共に広大なダム湖が水を蓄えます。
 

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コメント

 「八ッ場」と書いて「やんば」と読むのは珍しい。八ッ場ダム建設に伴い、住み慣れた土地の一部を始め、川原湯温泉街、小中学校、JR吾妻線、国道145号線が全部水没してしまうそうですね。名勝吾妻渓谷は最も観光客が訪れる「鹿飛橋」付近は、手を加えないようでね。補償基準、生活再建の目途もあり新しい街づくりのビジョンがあるのが救いです。
 戦前のことでお上の命令には逆らえず東京都民の水瓶である「小河内ダム」建設のため、悠久の土地を追われたのは、奥多摩小河内地区600世帯、3,000名。その後の流離漂泊の辛酸をなめた人も多かったでしょう。
 昭和12年東海林太郎が歌った「湖底の故郷」を思い出します。
    (一)           
   夕陽は赤し 身は悲し
   涙は熱く 頬濡らす
   さらば湖底の わが村よ
   幼き夢の 揺り籠よ

   (二)
   あてなき道を 辿(たど)り行く
   流離(ながれ)の旅は 涙さえ
   枯れて儚き 想い出よ
   ああ うらぶれの 身は何処

   (三)
   別れは辛し 胸 傷(いた)し
   何処に求む 故郷よ
   今ぞ当て無き 漂白(さすらい)の
   旅路へ上(のぼ)る 今日の空

 映画「黒部の太陽」の舞台は、黒四ダム。大破砕帯にぶつかった大町トンネル建設の物語。三浦洸一の「あゝダムの町」(昭和31年)は、果敢に挑む建設従事者の気持ちにピッタリで、当時黒四ダム建設の携わった人々にも愛唱された。
   (二)
   パワーショベルが
   ハッパの音が
   明けりゃ谷間にせき立てる
   ダムの町だよ男の町だ
   なんで東京がああ恋しかろ
 戦前、昭和とダムを歌った名曲があった。

 長い苦悩の反対闘争のはて仕方なく妥結したダム建設工事が今行われている。ダムの完成が長年苦労された地元の皆さんに多大な発展と恩恵をもたらすよう祈っている。

Mr.Philosopher
 早速、拙い文に対して、核心を突く格調高い文でコメントくださり、心底より感謝申し上げます。
今回、現地を訪れた感じでは湖底から移動を余儀なくされた住民は、皆、高台の近代的な住宅に住んでおられるようです。もちろん、故郷を離れ遠方に行った方もいるかもしれません。以前、この辺りの住宅は都会とはかけ離れ、どちらかと言えば、粗末な家々が続いてた記憶があります。現在、高台は明るく道路が完備し、都市計画に基づいた区割りは長閑な佇まいです。今となっては良かったと思ってる方々が多いのではないでしょうか。超モダンな駅はあるし、道路は以前とは雲泥の差でよくなってます。次第に湖底時代を知らなかった若者が、人口に占める割合が高くなるでしょう。実は私の父方のルーツは埼玉県大利根町で昔は原道村でした。この界隈も利根川が近くにあり、大昔から氾濫の危機に直面していたと考えられます。
人間の知恵と力量が大自然の脅威に勝つこと、及びCO²を空気中に放出しない強力な水力発電により、人間生活は飛躍的に幸への方向へ向かうのではないでしょうか。
追伸、仰せの「黒部の太陽」は若き日インド滞在中にカルカッタの映画館で見ました。

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