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2018年3月 5日 (月)

指揮者コンクールを彷彿させる「エグモント序曲」

Photo【エグモント山2518mニュージーランド北島】

 一年ぶりに藤岡市で開かれた新みかぼフィルメンバーによる低弦楽器を中心とした発表会を聴きに行きました。プログラム内容はオーケストラ楽員が個々に、あるいはパートごとに行なった練習成果の発表です。
 
 曲はバロック音楽の頂点バッハによる「無伴奏チェロ組曲第三番」に始まり、作品は一台のチェロで旋律と伴奏を同時に弾き、時折、対位法パッセージが含まれ、この曲はチェロ奏者にとって難曲でも、挑戦し甲斐ある名曲です。伴奏の合間にメロディーが浮かび上がって聞えたとき鑑賞者は嬉しいものです。
 
 すべてのプログラムについて感想をメモリましたが、それを述べることが目的ではなく、あくまで室内楽の楽しみを追い求める私がいました。
 
 有名な作品であるモーツアルトの「クラリネット五重奏曲」イ長調を聴いて、弦楽四重奏と共に、古典派純音楽として響きが本格的であり、クラリネットの音色は低音から高音まで、そして細かい音の動きまで、それぞれクラリネットの特徴ある音色が発揮され、ずいぶん変化が感じられ、特に幅のある低音の響により魅力が感じられます。モーツアルト固有の雅やびな音色が会場に伝わり、私の心は集中して拝聴できました。彼女とは以前に浜川のジムでお会いしたことがあり、演奏後挨拶でき嬉しかったです。
 
P1020730
 
 私は若き日、東京で行われた民音主催による指揮者コンクール本選会を聴きに行きました。審査員は斎藤秀雄氏をはじめ、外山雄三氏などそうそうたる指揮者たち。このときコンクールに参加したのが今や大御所の若杉氏や小泉氏です。
 
 一次予選の課題曲はべートーべン「エグモント序曲」で、本選会の課題曲はウェーバー「魔弾の射手序曲」、自由曲では若杉氏は確かモーツアルトの40番シンフォニーを指揮したと思います。オーケストラは同じ「エグモント」や「魔弾の射手」を幾度も繰り返し演奏することから、楽員は大変な精神力を使うことになりました。また、それは指揮者の今後の命運がかかってるからです。
 
 今回の低弦発表会で珍しくホルン八重奏による「エグモント序曲」は、その編成と挑戦に驚きました。しかし、拝聴するとロングトーンやフォルテはアンサンブルの領域を超える迫力に満ち、特に下降するパッセージが圧巻です。このような名曲を聴くことは心から楽しいことです。曲を聴いて何の曲でもいろんな編成で名曲を演奏することが可能であり、角度を変えた楽しみ方があると認識を新たにします。
 
P1020732【今が盛りの紅梅しだれと白梅しだれ】・・・拡大してご覧ください。
 
 同様のことは、十三名のチェロによるフィツェンハーゲン作曲「アベマリア」にも見られ、4パートに分かれて、一心にアベマリアに取り組む姿には平素からシンフォニーなど難曲に挑む仲間としての姿に、強い絆が溢れ、高音域の第一パートから低音域の第四パートまで、少しの対位法と多くの和声に弦の醍醐味をこれでもかと観客に訴えます。「チェロパートの絆よ永遠に!」です。
 
 コントラバスによるブルッフのコル・ニドライは長い曲をすべて暗譜で奏する記憶力と、それは音色と音程、そしてビブラートを含み、何より柔軟な表現を求め、終曲まで集中する彼女の精神に感服の至りです。N響に女性コントラバス奏者がいますが、彼女は群馬出身です。群馬県には凄い、若い、何より美しい女性コントラバス奏者が2人います。
 
 モーツアルトのピアノ三重奏曲第2番「ケーゲルシュタット」K498は最後を飾るに相応しい演奏で、ピアノ、クラリネット、そしてチェロ3人のテクニックと音色・音程に、表現上この上ない美的感性が漂います。特にピアノタッチの軽やかさとダイナミックな奏法両面に、そして「水を得た魚」のように生き生きとモーツアルトに向かう姿は感銘そのもの。
 
 ピアノ三重奏としての本格的な響きに室内楽の真髄に触れることができました。プログラム最後にこの演奏を拝聴でき、十分に心が洗われ、個人的には13年間、毎日一人での生活ですが、明日からまた希望を持って生きる力が湧いて来ました。新みかぼフィル楽員の皆さんに心底よりお礼申し上げます。
 

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コメント

毎回、花梅の写真を見ながら、ふと思います。「春らしさを感じる」というよりは、「寒さのピークは過ぎた」たという感覚です。本格的な春の到来を待ち遠しく思っています。

     こんな老木になっても
 こんな老木になっても
 春だけは忘れないんだ
 ご覧よ
 まあ、紅梅だよ(山村暮鳥)

投稿: 梅ケ谷 | 2018年3月 5日 (月) 14時15分

梅ヶ谷さんへ・・・音楽を聴いて作文するほど難しいことはありません。音楽は聴いてその良さに、深みに心が入り込み、素晴らしいと感じればそれでいいのです。人に感動を伝えるために書いてます。
こんな老木になっても
 こんな老木になっても
 春だけは忘れないんだ
 ご覧よ
 まあ、紅梅だよ(山村暮鳥)
いいですね。
この続きは5日のバクで飲みましたが、先程、無事に帰宅しました。

投稿: カッキー | 2018年3月 5日 (月) 15時35分

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