「稚内モザイク号」直仔が北海道へ、九州へ
東日本グランドナショナルレースにおいて私は早めの夕食をしていたらバタバタっと帰還した羽音が聞えたことが今でも忘れられません。「モザイク号」が帰って来たのです。この瞬間はおそらく生涯忘れないでしょう。
殆どの鳩舎が帰還してない状況でありながら「モザイク号♂」が稚内から帰還したときの喜びは誠に大きかったです。すぐ鳩舎に入り、鳩を手にし「日本最北の地からよく帰ってきた」と頬ずりをしました。モザイク号は当舎では1羽だけ参加させ、その1羽が帰って来ました。モザイク号の胸には3㎝ほどの引っかき傷が微かに残り、少し血が滲んでいます。帰還途上で猛禽に追いかけられ、辛うじて逃げ切った壮絶な飛翔であったことが伺えます。
60年間レース鳩飼育し続け、帰還時に涙が出たのはこの時だけです。「モザイク号」は私に対しては従順で抵抗することもなく、鳩舎内ですぐに捕まります。私が主であることを知ってるようです。
若き日は200K~900Kまで連合会で8回優勝、その頃は稚内からはミニユイエ系で翌日2羽帰しましたが、当時は勝負に夢中であったため感傷に浸ってはいません。でも、直線距離1039K離れた日本最北の地から帰還したことは誠に優秀なレース鳩といわねばなりません。
当時と比べ、昨今は年齢も嵩み、一人暮らしであることから「モザイク号」は家族の一員の思いが強く、雛から育てた思いや、近年、導入したホープGN号や、ヨーロッパ・1000キロチャンピオン「スチール号」の血を受け継ぐこの鳩を、早朝に大間々の高台から放した単羽訓練の繰り返しの思いが蘇り、今までになく「稚内からよく帰って来た」との思いが強かったです。
実はレース鳩飼育を今年11月いっぱいで断念ました。現在、私はまあまあ元気ですが、前述の如く、14年前に妻に先立たれ一人暮らしであることから、万が一、急遽入院にでもなったら、70羽も飼育してるレース鳩の処置は一度にはどうにもなりません。このことを勘案し、鳩を友人鳩舎に託し、この思い出深い緑の鳩舎は今月いっぱいに解体が決まってます。既に自分で周囲の網と、入口などは撤去しました。後は業者が解体します。
多くのレース鳩を秋から順次、地元・倉賀野町の鳩愛好家に10羽ほど飼育を依頼したり、種鳩に関しては、以前からの友人ピジョンクレージー鳩舎に多くを飼育依頼しました。委託専門のピジョンクレージー鳩舎では来春、国際鳩舎へ「稚内モザイク号」の直仔を送るとのことです。彼の鳩舎には優秀なメスが揃っていることから私も期待してます。
ネット社会の成せる業です。掲示板やフェイスブック、そしてブログを通じて北海道にお住まいの大橋鳩舎へは「稚内モザイク号」の直仔をプレゼントしたことがあります。それはネットを通じて、親しくしていただいたことや北吉原で放鳩に立ち会ってくださった返礼としてです。
実は、当舎のモザイク号が北海道・北吉原700Kグランプリレースに参加したとき、大橋さんは早朝わざわざ遠方より、その放鳩シーンに立ち会い応援して下さったのです。その時、大橋さんはその中に私の鳩がいることは知っておられた筈です。ですから、コンテナから飛び出した多くの鳩の中に、後に「稚内モザイク号」と命名される鳩がいたのです。
【右から二人目が大橋さん・・・北吉原700Kの放鳩地で】・・・このコンテナ内に700K参加のモザイク号がいた。その後、GNを帰還し、その直仔カッキーチェが大橋鳩舎へ行き、幸運につながる奇跡が起ころうとは当時は想像できなかった。
その時、まさか、その鳩【モザイク号】がその後に稚内GN1000Kに挑戦し、見事に帰還するとは私も思ってませんでした。
700Kを現地・北吉原で応援して下さったお礼に、後に、最北の地から帰還した「稚内モザイク号」直仔である「カッキーチェ」を彼にプレゼントしました。大橋さんのレース鳩飼育の腕がよいのでしょう。カッキーチェ直仔が今度は東舞鶴グランドナショナルレースで総合7位に入りました。不思議なご縁です。
遠方にお住まいのため、お会いしたことはなくても互いに、誠心誠意、情熱を持って接することにより、Win Winの関係が築け、誠に有難く思います。
ところで、ピジョンクレージー鳩舎では全国のレースマンにネットを媒介にして、レース鳩を紹介してます。彼からの連絡では、最近は前橋市へ送られたり、遠く九州・熊本県に鳩舎を構える松井鳩舎さんへ、写真のモザイク二世号を届けられたとのことです。
この二世号は「父・稚内モザイク号」が稚内から帰還後、種となって初めての直仔です。交配♀鳩は超長距離系「ブラックサハリン号」の孫です。ですから、長距離系と言えます。ぜひ、大切に飼育され、将来は直系により、「モザイク二世号」の生れ故郷・群馬県上空を通過してほしいものです。松井さん、頑張ってください。
注:ピジョンクレージー鳩舎【群馬県富岡市吉田正徳鳩舎】
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