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2021年12月13日 (月)

楽しめた! 色彩と躍動感の新みかぼフィル

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 街角に灯り始めたツリーの季節に相応しく、オープニングはアンダーソンの「クリスマス・フェスティバル」が豊かなサウンドで鳴り響きました。

 開演とともに「新みかぼフィル」の楽員の目には二年ぶりに定期演奏会が開催できた喜びに満ちたひとり一人の表情が客席からも読み取れ、特に、1stバイオリンには寒さを物ともせず、全身全霊を傾け、ノースリーブで演奏に取り組む若い女性も目に映り、今回の定演に臨む並々ならぬ意気込みが楽員たちから感じ取れました。

 曲は指揮者のタクトが下りるや否や、躍動的にして親しみやすい「もろびとこぞりて」で開幕し、観客も一緒に歌いたくなる雰囲気が醸し出されました。

 トロンボーンは主旋律が回ってくると、その特徴ある浸透性豊かな力強い音色が会場いっぱいに響き渡り、この演奏会を待ちわびてた心境が感じられ、楽員たちは皆、やっと来たチャンス到来とばかり、音楽表現を思い切り開花させ、観客を前にして、広いステージで演奏できる喜びをかみしめているように感じられました。

 「きよしこの夜」ではどこまでも美しく優しい弦楽器群の響きに酔いしれました。音楽の最終的喜びは、優しさと磨き抜かれた音色なのでしょうか。

 しかし、楽員の中には今回の定演に参加を強く希望しながらも、感染症の不安から、練習会や演奏会に加わることができなかった人たちも、きっといたことでしょう。楽器編成上、管楽器群と打楽器群はおおむね揃ってましたが、バイオリンなど弦楽器群には若干の人数の少なさがありました。しかし、演奏はそれを感じさせない充実した重厚な和声、躍動的なリズム、なかんずく演奏に立ち向かう情熱が私たち観客に十分に伝わり、私も久々にオーケストラ音楽を聴く喜びが享受でき、楽員のご努力に感謝です。

 今回の曲目は、例年のように本格的な古典プログラムというより、多くの人に親しみやすいプログラムが企画され、これによって、あるいは「新みかぼフィル」を身近に感じられた観客も多かったのではないでしょうか。

 観客は席を一つ空けて着席し、しかも、マスクをしての鑑賞となりましたが、多くの時間を家庭で過ごす生活を余儀なくされてるご時世の折、たくさんの人が聴きに来ていました。いつになっても埒が明かない世の中に、きっと多くの方が「みかぼフィル」の生演奏を楽しみに待っていたのでしょう。私が感じたことの一つに、事前のパンフレットに記述されてる通り「未就学児もご入場いただけます」に、ホッとした若い母親たちがかなり多かったのではないでしょうか。

 私の周囲にも小さなお子さんを連れた母親が多く見受けられ、親は音楽が好きな子供に育てようと考えても、もし「未就学児お断り」では、幼児教育の大切さが叫ばれていても、音楽的に無限の可能性を秘めてる子供たちの芽を摘んでしまいます。演奏中、声を上げたり動いたりする子供は一人もいませんでした。

 一方、「新みかぼフィル」の未来を考えるとき、また、若者に対する教育を考えるとき、小学生や中学生、高校生などが多く聴きに来られる時間帯は夕食時間になる6時30分開演より、土曜日や日曜日であれば、午後4時からの開演にすれば、もっと多くが来られるのではないでしょうか。育ち盛りの若者にとって約3時間、お腹を空かしてまで音楽を聴きに行くことはできないかもしれません。

 会場を見渡したところ、その多くは高齢者であり、若者同様、音楽が好きでも夕食時間を変更してまでは来られない方もいるかもしれません。私自身も高齢化の一人として、午後6時以降にある音楽会は健康を考え、空腹を我慢してまで最近はあまり行かなくなってます。今回も、結局、午後9時からの孤食となり、いつもとリズムが狂いました。でも、お腹が空いた分、遅い時間の一杯は格別でしたので、ご安心ください。

 ところで、本題に戻り、チャイコフスキーの作品は、どうしたことか、私たち日本人に親しみやすく、一般のヨーロッパ音楽より、何か身内の音楽のように感じられるのは私一人ではないでしょう。それは民族的な理由に遠因するのでしょうか。チャイコフスキーでなくても、例えば、多くのロシア民謡は私たち日本人には異質の音楽には感じられません。「ともしび」などのように、知らなければ日本の音楽ではないかと思う親しみやすい曲が多々あります。

 今回の演奏では「ポリネシアたちの踊り」に、特に打楽器群の活き活きした表現には参りました。中でも女性タンバリン二ストの躍動感満ち溢れた演奏には目を見張りました。彼女の演奏は、まるで飛び上がって踊っているようでした。音楽には先程述べた通り音色はもちろんですが、音楽が時間の芸術である所以を、また私たちは常に瞬間瞬間の中に生きてる実感を、彼女はこの上なく心に響く演奏を通して私たちに教えてくださいました。

 有名な「花のワルツ」では、雰囲気ががらりと変わり、透明にして哀愁味たっぷりのオーボエによるチャイコフスキー音楽の中に、どっぷり浸かった私の心がありました。一方、温かみを内包した迫力あるホルンの響き渡る音色に勇気づけられました。

 ところで、音楽は生で聴くとやはり感動する場面がいろいろ出現します。それはオーケストラのあちこちから奏でられる異なる音色の混ざり合いで、コールアングレによる独特の中低音を支配するかのような高貴な音色も会場に響き渡りうっとりです。決して目で見えませんが、オーケストラとは、明らかに音色という色彩の混ざり具合こそ生命と感じます。

 前述の如く音楽は目に見えませんが、2時間の演奏中、観客にとって唯一見えるのは指揮者の動きです。ですから、これも観客にとって演奏とその動きの組み合わせに楽しみがあります。今回は概して間接運動によって演奏全体を包み込むように指揮されました。曲によっては、間接運動と異なる時間的動作である直接運動や先入法を、ぜひ、次回には拝見できればと感じました。

 感染症もこの冬を乗り切ればと思いつつも、油断はなりません。それは海外の状況に関係するからです。新みかぼフィルハーモニック楽員の皆様には、これからも「地元の人の心に栄養を」をモットーに、楽しい演奏活動を期待しております。カッキー

 

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