カテゴリー「第九」の2件の記事

2011年12月12日 (月)

第九交響曲の聴きどころは重厚なレシタチーヴか

 今年も年末となり、暫くぶりに第九シンフォニーを聴きました。  12月に日本中で150回ほど演奏されるとのことで、第九を歌ったり聴いたりしないと一年が終わらない人が多くいるでしょう。これはオーケストラ団員も同様と思われます。

 今回の演奏は前橋第九合唱団と群馬交響楽団の共演で指揮者は手塚幸紀氏です。彼は1967年民音指揮者コンクール第1位です。

 実は私は、東京・虎ノ門ホールで行なわれた当時の民音指揮者コンクールで彼の演奏を聴いたことがあるのです。審査員は斎藤秀雄氏らで、一次予選の課題曲はベートーベンの「エグモント序曲」でした。

 この曲の導入は苦悩を表わすへ短調、ゆっくりした2分の3拍子、続いて4分の3拍子(1拍振り)のAllegroは運命交響曲を彷彿させるいわば「克服」の部分、最後は「歓喜」を表わす4分の4拍子(4拍振りから2拍振りへ)Allegro con brioという指揮者泣かせの流れです。

 本選会では課題曲と自由曲を指揮します。課題曲は魔弾の射手序曲」で、彼は自由曲にモーツアルトの40番第1楽章を演奏しました。今回、前橋での演奏会で暫くぶりに彼のタクトを拝見拝聴し、スマートな指揮振りに若き日の彼の姿を思い出しました。

 このため、今回、第九交響曲の前に演奏した「エグモント序曲」は、手塚氏にとって、きっと指揮者コンクールの思い出深い曲であり、指揮をしながら若き日を思い出してるのではないかと察することができました。

 という私もその昔、この「エグモント序曲」の指揮法についてCalcutta Symphony Orchestraのユダヤ人指揮者Bernard Jacob氏に習ったことがあり、氏に教わったメモを暫くぶりに出してみました。

 ところで、昨日、前橋での第九演奏会を拝聴し、この曲について改めて感じた点は下記の通りです。

 第四楽章・導入部分の直後に出てくる音楽というより重厚に語りかける低音弦楽器群によるレシタチーヴ、続いて回想的に出現する第一楽章の主題の断片と地の底から唸り来るようなレシタチーヴ、第二楽章の主題の断片と訴えるようなレシタチーヴ、そして第三楽章の主題の断片と、今までのすべてを否定するような壮大なレシタチーヴを経過し、ついに低音弦楽器群による歓喜の旋律へ導かれる過程こそ、ベートーベンの人生における葛藤から歓喜の確信へと移り変わるように思えてなりませんでした。

Kc3a4rntnertortheater_1830 【ベートーベンの指揮で第九が初演されたケルントナートア劇場】

 ベートーベンの作品の流れは一般的に「苦悩→克服→歓喜」への経過と言われ、前述のレシタチーヴが「克服」に当たる部分ではないかと感じました。

 この演奏会では、友人Samuel Toddさんの奥様が合唱のアルトパートとして出演されるので楽しみに拝聴しましたが、全曲ドイツ語の歌詞を暗譜しての歌唱には、そのご努力に敬意以外の何物もありません。

 榛名湖での合宿など一年間の練習の成果を大ホール2千人の観客の前で歌われる姿を拝見拝聴し、崇高な生き方をされてることに改めて素敵な女性と感銘しました。

http://www.youtube.com/embed/7tLdBtOBEGc 

 第九を代表する「歓喜の歌」は「ドレミファソ」の五音のみで作曲されており、「シ」と「ラ」が抜けてることが有名ですが、この曲の作詞者は何と「シラー」です。ベートーベンはこれを意識して作曲したのでしょうか。

 第九シンフォニーを通して「すべての人は兄弟になる」という人類愛の究極を訴えたベートーベンは初演を行った3年後に亡くなりました。作詞者のシラーは第九交響曲が完成する19年前に他界してるので、自らの作品をベートーベンの作曲で聴いていないことになります。

 日本で言えば江戸時代中期に生きたベートーベンとシラーは自らの作品が20~21世紀の日本で年末に盛大に演奏されるとは思いもよらなかったことでしょう。人生の短さと芸術の永遠性を感じてやみません。

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2007年12月20日 (木)

なぜ年末に第九が演奏されるのでしょう。

Kc3a4rntnertortheater_1830  写真はベートーベン自身の指揮により第九が初演されたケルントナートア劇場。

 Freude schoner Gotterfunken Tochter aus Elysiumと歌われるベートーベンの第九は日本で12月に150回以上演奏されるといわれます。

 青年時代のベートーベンはシラー文学へ造詣を深め、彼の作品「歓喜」に謳われた崇高な人類愛に傾倒し、その全節に音楽をつけようと志したといわれます。この詩に出会ってから第九が完成するまで実に30年もの歳月を費やし、生涯をかけて取り組んだ作品といえるでしょう。しかも、48才頃から殆んど聴力を失っていたようです。

 日本で初めて第九が歌われたのは90年前、徳島県鳴門市で行なわれたドイツ兵捕虜による演奏ということです。ドイツでは昔から大晦日に第九を演奏する習慣があったといわれ、彼らも故郷を懐かしんで歌ったのかもしれません。

 一方、指揮者ローゼンシュトック氏がドイツでは大晦日に第九を演奏する習慣があることを日本の楽壇に紹介したともいわれます。

 これと同じようなことで、イギリスでは「Auld Lang Syne」(蛍の光)が大晦日の深夜に歌われ、新年を迎える習慣が現在でも行なわれてるとイギリス人から聞いたことがあります。

 ところで、日本では「なぜ第九が年末の恒例になったのでしょう。」

   これについて私の考えは次の通りです。まず「歓喜の歌」が大変覚えやすい旋律であることが考えられます。この理由は日本人が得意とする「五音音階」でできてることにより、異国の感じがなく、気持ちがしっくりするのでしょう。日本の昔からの民謡や童謡の殆どは「ドレミファソラシド」をすべて使ってません。楽譜を調べれば多くは「五音音階」であることが分かります。

 歓喜の歌の主旋律は「ドレミファソ」のみで作曲され、そして作詞者が「シラー」なのでおもしろいです。

 現実に戻って、どなたでも生活の大切な基盤は経済です。声楽のソリストやオーケストラの楽員は会社員のようなボーナスを自分たちで年末に稼がなくてはなりません。経済を考えると年末に第九を演奏しないわけにはいかないと思います。

 合唱団や聴衆は1年の締めくくりとして、これを歌ったり聴いたりしないと年が越せない心境であっても、オーケストラ楽員などにとっては平素の定期演奏会とは雲泥の差で集客率の良い「第九」を演奏しないと遣り繰りがつかない台所事情があると考えられます。

 こんな現実があっても、年末には第九を歌ったり鑑賞して、Alle Menschen werden Bruder(すべての人々は兄弟になる)の願いのもと、来年こそは世界から災害、飢餓、病気を減らし、住みよい地球にしたいと願わずにはいられません。

  最後に付加えたいことは「第九」の作詞者であるシラーはこの曲が完成する19年前に世を去り、自身が作詩した「歓喜」を「第九」の音楽で聴いてないです。

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